子どもが学校でどう過ごしているのか、その様子を実際に見る機会がないのは困るかと思ったが、そうでもない。下校時には担任が校舎の出入り口まで子どもを連れてくるので、迎えに来た親は学校での様子を尋ねることができる。保護者面談もいつでも受け付けてくれる。よくよく考えてみれば、行事の際に子どもの姿を見ても、問題解決にはつながらないのだ。
学校行事のために有給休暇を取らなくてよいフランス人は、仕事に集中することもできるし、自分のために有休を使うこともできる。そもそも学校側も、共働きを前提に、保護者に対応している。日本の小学校では、2、3日前に「なわとびを持ってきてください」などと指示され、慌てることがあった。フランスの小学校では、各家庭が常備していないものを持参させる場合は、10日から2週間くらいの猶予をくれた。日にちに余裕があれば、共働きの家庭もゆっくり準備することができる。
社交やバカンスを楽しむ余裕もある
フランス人女性は、仕事や育児から気分転換し、生活を楽しむことにも熱心だ。週末には親しい友人を自宅へ招いて、おしゃべりを楽しむ。社交の伝統の長い国だからか、みんな話上手だ。最近観た映画や読んだ本の話、美術展など幅広いテーマが話題になる。
パリ市内に住む友人宅に昼食に招かれたとき、いつもはパンツ姿の友人がスカートにハイヒールを履いてエレガントな装いをしているのに驚いたことがある。社交の場であるから、きちんとおしゃれをするのだ。普段着とそう変わらない服装で出掛けてしまった私は、大いに反省した。
日が長くなる4、5月になると、フランス人の関心はもっぱら「バカンス」になる。パン屋や肉屋のような小売店も夏に1カ月くらい休業する。「バカンスはどこへ行くの」などと話し合うフランス人は心底うれしそうだ。秋には、「バカンスはどうだった?」という会話で盛り上がる。
南仏の海辺など人気のバカンス先で観察していると、彼らは実に何もしない。海辺で寝そべって、肌を焼いている。あるいは、眠っている。あちらこちらへ出かけて、観光して回ることはしない。「何もせずに、のんびり」というのが、バカンスの醍醐味なのだ。「バカンス」には「空白」という意味もあるから、頭をからっぽにしてリフレッシュするというのは正しい過ごし方なのかもしれない。
ゆとりのある労働環境が家庭と仕事の両立を支え、バカンスでリフレッシュすることを可能にしている。日本で女性が働き続けられるようにするには、長時間労働の慣習を変えることだけでなく、母親の仕事を合理的な視点から見直すことも必要ではないだろうか。
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