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没後4年、芥川賞作家「田辺聖子」今も心打つ生き方 大阪を愛し、大阪弁を愛した「おせいさん」

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夫と毎日のように晩酌しながらさまざまなことを語り合い、家事や子育ての合間に小説を書く。新しい環境で、作家としての視野が大きく広がったという。

「同じような世代で育ってますけど、4つ年上でしかも男性というのはやっぱり自分が発表すべきこといっぱい持ってて、それをちゃんとしゃべりおるからね。要領得て、よくわかるようにしゃべる。『これが大人の男の説得力やな』というのを学んだわけよ。

それまでは男性を書いてるけれども、男役っていう感じ。編集者に笑われてたの。『田辺さんの書くのは宝塚(歌劇)の男役や』って」

文中に登場する大阪弁には細心の注意を払った

田辺は文中に登場する大阪弁には細心の注意を払ったという。

「コタエタというのは傷ついたということである。大阪弁には『傷つく』などというキザな言葉はないので『コタエタ』と言うのだ。そしてまた『逃げられた』というのは『別れた』と同義語で大阪弁には物事を自嘲・被害的発想で表現することが多い。『あたしかてコタエタわ』と私は小さく言った」(『苺をつぶしながら』)

「大阪弁はとっても気を入れて書きました。やっぱり字に対して美意識があるかないかだと思う。みんなが使ってて、耳で聞いたら何ともないんだけど、目で見たときに汚い言葉というのは小説には使えない。小説は文字の芸術ですから。目で見てきれいでないとダメなのね。

だから、難しい漢字にいくらルビがふってあっても、そういうものがあまり並ぶとみんな嫌になっちゃう。みなさん、いっぺんご覧になって。スッと頭に入って『あっ、いいこと言ってるな。何て素敵なセリフだろう』『俺、これ今度使うてみよう』とか(中略)。

文学というのは、本当に人間の人生の中へ生身に入って来て、そのままきれいに消化されていくと私は信じてます。

小説の中でも、素敵な言葉、人をあっと驚かせる言葉、人の心の中に警戒されないうちにスルリと入ってって、いつの間にか大きく太っていく。こういう愛の言葉だったら、みんなとても可愛がってもらえるだろうなって。そんなことを考えるから、いろいろモノの言い方とか会話なんか、とっても力を入れて」

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【共感を呼んだ「乃里子三部作」】

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