禅僧が説く「感情に振り回されない」心の持ち方 呼吸と姿勢を整える、それが「心を磨く」第一歩

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まずは「ふぅ~~」と息を吐きましょう。呼吸という言葉は、呼(はく)吸(すう)の順番になっていますね。同じように、深呼吸するときも息を吐くことが先です。体の内側にある息を全部出しきるつもりでゆっくりとすべて吐きだしましょう。おなかの中にいた邪気を、すべて体の外に吐き出すイメージです。

全部出しきったら、今度は新鮮な霊気を取り込むような気持ちでゆっくりと息を吸い込みます。吸い込んだ息は胸のあたりでとどめず、おなかまで落としていきましょう。

体に力が入りすぎていると、呼吸はおなかまで落ちていきません。その場合はもう一度、ゆっくりと息を吐きます。そのうち、じょじょに体の力が抜けていくのがわかるのではないでしょうか。

行動の切り替えのたびに、いったん息を吐く習慣を

禅的生活をおこなううえで大切なことは日常の立ち居振る舞いです。それはマナーがよい、見た目がいいというだけのことではありません。所作は、その人のすべてを物語るといっても過言ではないのです。

その人が今どんな精神状態なのか、どんな生活を送っているのか、何に価値を置いているのか、どんな経験をして生きてきたのか、そのすべてが所作に表れているのです。

ドアをバタンと閉める、食器をガチャンと置く、脱いだ服をソファに放り投げる、人に声をかけられてもぞんざいな返事をする……。そのような行為は、あなたを「物も人も尊重できない人間だ」と証明することになりかねません。

心を整えるためには、まず立ち居振る舞いを整える必要があります。そのために大切なことも、呼吸なのです。

感情にまかせた雑な振る舞いをしているとき、呼吸は必ず浅くなっています。食器をテーブルに置くときにも、人に物を手渡すときにも、パッと衝動的に動きそうになったら一瞬立ち止まって、ゆっくり息を吐きましょう。呼吸が整うだけで、動作そのものがおのずから変わっていきます。

不愉快なメールに返事を書くときにも、家族の発言にムッとしたときにも、ゆっくりと息を吐きましょう。せわしない気持ちがすっと落ち着き、地に足がついたような心持ちになるはずです。

最近は科学的なデータでも、呼吸の重要性が証明されているようです。呼吸が整うと、全身の血流が25%アップするというデータがあります。逆に呼吸が乱れると、血流が悪くなることもわかっています。脳に酸素を運ぶのも血流ですから、冷静な思考力も呼吸と大きくかかわってくるはずです。もちろん健康のためにも、深い呼吸は重要な役割を果たすことは間違いありません。

私たちが生きる社会は、どうしてもストレスフルになりがちです。自分だけ巻き込まれないでいるのは難しいものです。

だからこそ、イラっとしたら息を吐く。そんな習慣をつけましょう。

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