くら寿司「赤字転落」がさほど深刻でない理由 回転寿司と100円ショップ「値上げ戦略」の明暗

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回転寿司は「100円皿」からの脱却で、強固なビジネスモデルを築くことができた(写真:PIXTA)

個人的な体験ですが、最近、くら寿司で持ち帰る寿司の価格がはっきりと高くなってきたことを実感しています。事務所に夜、来客があるときは回転寿司とビールを買っておけばだいたい場が持つので、私の場合、くら寿司の持ち帰りは定番メニューです。そして定番メニューだからこそ価格の変化は敏感に気づくのです。

近所のくら寿司は都市型店舗です。一番安いお皿が132円、その上が190円で、高級メニューはだいたい290円というのが直近の価格構成となっています。

100円のバケツが薄くなった

さて、最近もうひとつ気になることが100均の価格です。ダイソー、ワッツ、キャンドゥといった業界大手のお店では220円、330円、550円の商品がかなり増えてきています。さらに商品を手に取るとステルス値上げも目立ちます。商品が小さくなっていたり、A4のクリアフォルダの枚数が減っていたり、プラスチック製のバケツの材料が薄くなっているのにしばしば気づきます。

私はビジネスの評論家なので人一倍、こういった業種の「企業努力」に気づくことが多いのですが、こういった値上げはこれから先、うまくいくのでしょうか?

昨年頃から私は「これからは値上げに成功する企業しか生き残れない」と断言しています。円安、人手不足、商品の国際価格や電気代の高騰と、世の中はとにかくコスト増の方向にしか動いていません。その時代にあって、庶民の味方である回転寿司と100均という2つの業態について、ビジネスモデルは大丈夫なのかどうか検証してみたいと思います。

実は昨年9月、くら寿司の値上げが発表された際に、私は東洋経済オンラインで「この値上げは心配だ」と書きました。というのはそれまでの110円寿司を115円に値上げする一方で、220円寿司を165円に値下げするという話だったからです。

全体的に値上げを打ち出さなければならない時期に、値上げ分が値下げ分と相殺されてしまっては効果が薄まります。心配した通り、くら寿司の2023年10月期中間決算(2022年11月~2023年4月)は最終赤字10億円に転落しました。

ただ値上げ戦略という意味では、回転寿司業界は私よりもずっとしたたかでした。くら寿司では115円と165円以外の、さらに高額のフェアメニューの比率が増えているのです。

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