くら寿司「赤字転落」がさほど深刻でない理由 回転寿司と100円ショップ「値上げ戦略」の明暗
実はこの流れについて、冒頭でお話ししたユーザーの立場で私が値上げにどう対応したかというと、それほど気にならない形で吸収できています。私の会社の場合、来客に寿司とビールを振る舞って、気持ちよくなってもらいながらいろいろと経済に関わる情報収集するのですが、そのときのお金の使い方は私の側にも企業努力の余地があります。
簡単にいえばお買い得メニューを見分けて、なるべくそちらに注文を寄せます。くら寿司の場合、本当は簡単に注文を済ませようとしたらセットメニューを最初から選んだほうが楽なのです。人気10種セット1080円を3人分注文すればそれで終わりというのもひとつの考えですが、実はこれだと合計30貫で、お客様をお招きする際の分量的にはちょっと見劣りします。
それで私も企業努力をするのです。セットではなく単品のお得そうな商品を組み合わせれば同じ3240円の予算でそれなりに美味しそうに見える寿司40貫ぐらいの独自セットができあがります。それをきちんとやれば値上げでも比較的安く消費者も寿司を楽しむことができる。
100均で増えてきた高価格帯商品
実は一歩引いて俯瞰すれば、そういう細かくて賢い買い物をする顧客からはあまり儲けることができず、ざっくりとした買い物をする顧客からの利益で全体の利益が賄われていたりもするものです。
さて、このように値上げ後も柔軟な価格設定が可能だというビジネスモデル上の利点を残している回転寿司業界とは違い、同じ柔軟性という尺度で見た場合の100均の未来はなかなかに苦しいものがあります。
たとえばダイソーの場合、安い商品の自由度は110円、220円、330円の3種類しかありません。550円、880円、1100円の商品が存在することは知っていますが、それは本来、100均に買いにいくよりもニトリで似た商品を探したほうが割安だったりするカテゴリーです。基本的に消費者は、100円程度で済ませたい買い物をするために100均を訪れるのです。
そういった顧客ニーズに応えようとするとどうなるのかというと、これは実際に100均で起きている現象だそうですが、220円商品や330円商品の方が110円商品よりも粗利率が低く儲からない値付けになっているのです。
ダイソーでも高いレベルの550円商品や1100円商品が売れるのがどういうことかというと、メディアがよく「ダイソーさん信じられません。これを1100円で売るなんて」と記事を書くぐらい、消費者にとってコスパがいい商品なのです。
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