くら寿司「赤字転落」がさほど深刻でない理由 回転寿司と100円ショップ「値上げ戦略」の明暗
さらに準都市型店舗では110円メニューが125円に、都心店舗は132円にと立地ごとに3段階の価格体系が確立して、結果的にコスト増をチェーン全体でカバーできるだけの値上げ構造を作れたのです。
その構造へのシフトをさらに明確にしたのがスシローの「黒皿」と「白皿」の導入です。
スシローはライバルのくら寿司より少しだけ高い形で、一番安い黄皿は郊外型店舗が120円、準都市型店舗が130円、都市型店舗が150円と、くら寿司よりさらにメリハリがついた形の3段階立地別価格を打ち出しています。
そのうえで例えば郊外型店舗ではこれまで120円の黄皿の上に、180円の赤皿があったのですが、この5月31日にその上に新価格の黒皿260円を導入し、さらに値段を固定しない白皿を導入したのです。
価格転嫁がやりやすくなった
基本は立地で3種類、ネタのランクで最低4種類と、掛け合わせで考えると12種類の価格設定をすることが可能になりました。それだけでもコスト増を価格転嫁する際の会社側の自由度が広くなったのですが、実はここにさらにもうひとつの要因が加わっています。
それが一皿一貫のメニューの増加です。回転寿司の基本は一皿に二貫の寿司が載ったメニューなのですが、それに加えて一皿一貫のメニューを増やせば、価格設定パターンは倍の24種類に増えます。実際は白皿が300円~390円まで自由に値段を変えられるのですが、それを考慮に入れない基本パターンだけでも24種類というです。
黄皿120円に二貫載っている場合を一貫60円というように実質価格で安い順に並べてみれば、郊外店の基本パターンはネタの種類に応じて一貫あたり60円、90円、120円、130円、150円(白皿300円の場合)、180円、260円、300円(同)の値付け幅から選べます。
つまりスシローは今後、円安や需給でネタの仕入れ価格がさまざまな形で値上げされたとしても、消費者に最小限にしか気づかれない、ないしは気に障らない形で価格転嫁をやりやすくする状況に持っていくことができたのです。もちろんくら寿司も似た状況です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら