老舗ベンチャーキャピタルで「経営権争い」再び FVC社長の更迭を狙う筆頭株主は何者か

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だがDSG1は、「1件のM&Aも実現することなく株価も低迷している」など、金氏の社長としての資質を批判。金氏主導で売上高30億円規模の再生資源・エネルギー関連企業の大型M&Aを検討していることについては、上場廃止リスクすらある「裏口上場等の懸念」があると指摘する。

「株主総会で経営権を取得しても、挨拶ひとつなく連絡ひとつ寄こさなかった」と、DSG1に対しても常識と礼儀が金氏にはないと不満を示す。

DSG1が出したネット広告
ネット広告(画像右上)で特設ホームページに誘導

DSG1は株主提案のタイミングに合わせて「株主提案特設ホームページ」を新設。そこへ誘導するためのネット広告を出稿する力の入れようだ。

DSG1が取締役候補として株主提案した7人には、DSG1代表の澤田大輔氏やDSG1執行役員の伊藤洋一氏が含まれている。このうち伊藤氏をFVCの新社長候補としている。

今回、東洋経済は澤田氏と伊藤氏に取材を依頼。いったんは日程が決まったものの、取材2日前に突然断られてしまった。「会社側から5月23日に招集通知が発送された」ことを理由に挙げる。DSG1とは、いったいどのような会社なのか。

不動産で業容を拡大

澤田氏は起業後、不動産で業容を拡大してきた。5月の『現代ビジネス』のインタビューでは、「バルクセール(不良債権=不動産のまとめ売り)で物件を購入したので、レジデンス、ホテル、オフィス、サービス付き高齢者住宅、商業施設などさまざまな業態」の不動産投資プロジェクトにかかわったと語っている。

その中で多くの会社役員を務めた業態の1つがラブホテルだ。2021年まで10年以上にわたり、ディーズダッシュやヴィラ、PONTO、エル・ピー・名古屋などの複数社で代表取締役を務めてきた。東海から関西と展開エリアは広く、「ミラージュ」「ホテルハグハグ」など多くの経営に携わった。しかし登記簿謄本をたどると、2019年頃から次々と辞任している。

澤田氏が「数年前から金融業への転身を図り、10社以上あった会社を売却」(『現代ビジネス』のインタビューより)と語っているように、事業転換を進めているのかもしれない。

DSG1は2011年に設立され、澤田氏は2018年1月から代表を務めている。業績は非開示だが、現在は従業員30名規模で本社を名古屋に構える。FCVの開示資料の中では、2021年9月末時点で1.35%を持つ大株主として登場したのが初めてのようだ。

DSG1は今回の株主提案において「投資・M&A事業、不動産事業等を展開する」と自社を紹介している。ただし「投資業」「M&A事業」は2023年3月に登記簿謄本の「目的」に追加されたばかり。M&Aやベンチャー投資の具体的な実績は不明で、主事業は依然として不動産業とみられる。

社長候補とする伊藤氏は、近畿産業信用組合に27年間勤め、2022年12月にDSG1執行役員に就任したばかりだ。社外取締役の候補者は5人で、ガバナンス体制の強化を打ち出す。若手ベンチャーキャピタリストの実務経験者として、ユーチューバーの顔も持つ飯田健登氏などが入っている。

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