老舗ベンチャーキャピタルで「経営権争い」再び FVC社長の更迭を狙う筆頭株主は何者か
なお候補の1人の久保隆弁護士は、所属弁護士会より2017年と2020年の2回にわたって懲戒処分を受けている。反省を求める戒告とはいえ、なぜ社外取締役候補としたのか。DSG1に見解を尋ねたところ、「会社側から招集通知が発送されたこともあり、一律して取材をお断りしています」との回答だった。
独自色のない事業戦略
DSG1はFVC株の取得に約16億円を投じている。それだけの資金を使って経営権を掌握した暁には、FVCをどう舵取りしていくのか。
FVCの業績は現在、約50本のファンド運用による管理手数料が中心で低水準が続く。金氏は大型M&Aなどによる成長戦略を描くが、これをDSG1は「ギャンブルのような企業経営」と問題視し「堅実かつ確実な事業経営の実現」を掲げる。
DSG1が戦略として挙げているのは、「CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)ファンドの強化と、地方創生ファンド(主に事業承継)」などだ。ただこれは現体制のFVCでも手がけており、目新しさはない。
伊藤氏の言葉からも独自の戦略は見えてこない。株主説明会では「社員の皆さまやファンド出資者の皆さまらと議論をしたうえで、中期ビジョンを作成したい」というにとどめた。
「就任後に社員とステークホルダーと戦略を決めるという株主提案を初めて見た。やりたいことが言えないのか、本当に何もないのかさえわからない。提案内容は批判に終始して対案がない」
金氏は株主提案をそう批判する。仮に総会で自身の取締役再任が決議されても、「株主提案が1つでも可決されたら辞任する。混在するメンバーでFVCを立て直すのは無理」と言い切る。
ホワイトナイトの存在は否定
「経営に対する考え方は変わらないが、キャピタルマーケット(資本市場)に対する考えは変わった。(敵対株主が)株式の2割を保有し続け、いつか彼らに城(会社)を明け渡すことになってもいいのか」
危機感を募らせる金氏。「FVCの戦略を支持してくれるようなパートナー株主は積極的に模索していきたい」とも話すが、現時点でホワイトナイト(友好的買収者)の存在は否定している。
6月13日の総会では、金氏ら現経営陣とDSG1のどちらの提案が可決されるのか。現経営陣が勝利しても、大株主としてDSG1が残れば問題はくすぶり続ける。金氏は「勝ち方が大事。圧勝すれば、来年以降に株主提案を出しづらくなる」と語る。対立の行方は混沌としている。
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