「家」に立脚した宗教は多死社会でも出番なし 生き残るには「個人の時代」への適応が不可欠

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『宗教 消滅危機』特集バナー
少子高齢化や過疎化、葬儀の簡素化で宗教の出る幕がなくなりつつある。(デザイン:小林由依、藤本麻衣、松田理恵)
少子高齢化や過疎化、葬儀の簡素化で宗教の出る幕が急速に失われつつある。宗教はこのまま消えゆくのか。6月5日発売『週刊東洋経済』の特集「宗教消滅 消えゆく寺・墓・葬儀」では機能不全に陥る伝統宗教、衰退する新宗教の「今」を追った。

6月2日、政府は2022年の出生数が初めて80万人を割り込む77万人だったと発表した。統計を取りはじめた1899年以降で最少だ。一方で死亡者は増加傾向をたどる。2005年に死亡者数が出生者数を逆転し、2022年は158万人に達した。2040年頃まで増え続ける見込みで、日本は未曾有の多死社会へと向かう。

週刊東洋経済 2023年6/10号[雑誌](宗教 消滅危機)
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東証プライム上場の広済堂ホールディングスは目下、投資家の訪問要請が引きも切らない。投資家が注目するのは東京都内で6カ所の火葬場を運営する子会社の東京博善。東京の年間死亡者数12.7万人(2021年)のうち東京博善は約7万体を火葬する。東京23区内に限ればシェアは7割弱。投資家は同社の中長期的な成長力を評価しているのだ。

広済堂は5月12日の決算説明会で、2024年3月期の営業利益目標を63億6000万円と公表した。前2023年3月期の営業利益が42億8000万円なので実に48%強の増益計画となる。

カギを握るのが火葬場に併設される葬儀場の大幅増設計画だ。2022年12月末に35だった葬儀場を2023年8月までに71へと倍増させる。火葬場と葬儀場の一体運営でシナジーを高める狙いだが、大規模な葬儀を当て込んだものではない。この4月にリニューアルオープンした桐ヶ谷斎場(東京・品川区)が注力したのは家族葬向けの葬儀場。受注増をはかるのは中小規模の葬儀だ。

葬儀は縮小、僧侶も招かれず

多死社会の到来で「死」の周辺産業は活況と見られがちだが、必ずしもそうではない。経済産業省の「特定サービス産業動態統計調査」から推計すると、葬儀単価はコロナ感染拡大前の2019年に約134万円だったが、コロナで大規模な葬儀が減り、平均単価は112万円にまで落ち込んだ。コロナ後は回復を見せるも、平均単価の戻りは鈍い。

もとより、地縁・血縁関係の希薄化で葬儀は簡素化が進む。東京博善が家族葬をメインターゲットにした葬儀場を増設したのも、そうした理由からだ。

葬儀の簡素化で大きなダメージを受けているのが僧侶である。

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