「家」に立脚した宗教は多死社会でも出番なし 生き残るには「個人の時代」への適応が不可欠

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世界各国の葬儀や火葬、弔い方を研究する一般社団法人火葬研の武田至代表は、「墓は、家墓から個人墓に変わってきている。家の永続を前提にした日本の檀家制度は成り立たなくなっている」と指摘する。

承継者のいない、個人向けの墓は増加している。台頭著しいのが「樹木葬」だ。鎌倉新書が2022年1月から同年12月まで、ポータルサイト「いいお墓」経由でお墓を購入した人を対象に購入した墓の種類について聞いたところ、一般葬19.1%、納骨堂20.2%に対し、樹木葬は51.8%と半数を超えた(お墓の消費者全国実態調査2023年)。

公営墓地でも「個人化」

公営墓地でも個人墓に舵を切った自治体がある。北海道上川郡の東神楽町だ。

少子高齢化や核家族化、お墓の承継問題などを受けて東神楽町では2015年に「墓地に関する意識調査」を実施。新しいタイプの樹木葬に対しては心理的抵抗があったことから、一般墓をベースにした合葬墓移行型有期限墓所を始動させることにした。

はじめは一般墓に入り、期限を迎えたら遺骨を合葬墓へ改葬(移動)し、町は墓石の撤去を行う。つまり最初から「墓じまい」を折り込んだプランだ。承継者は不要だから単身者でも申し込める。東神楽町くらしの窓口課課長補佐の渡辺崇文氏は「独身女性など、承継者がいない方の申し込みが多い」と話す。

多死社会は「個人の時代」としてやってくる。寺院や葬儀業者、墓が生き残っていくには、個人のニーズに対応した形へと脱皮していくことが求められる。

野中 大樹 東洋経済 記者

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のなか だいき / Daiki Nonaka

熊本県生まれ。週刊誌記者を経て2018年に東洋経済新報社入社。週刊東洋経済編集部。

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