社外取締役に「女性アナウンサー起用」の是非 女性登用で先行する欧米ではセレブの社外取も

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まず、社外を含めた女性の役員比率が、日本よりもはるかに高い。内閣府の資料によると、優良上場企業における女性の役員比率は日本が2022年7月末時点で9%にすぎないのに対し、フランスは45%、イギリスは40%、アメリカは31%となっている。ただ、本当に適性がある人のみでこれだけ高い割合にするのは、容易ではない。女性比率を上げるためには「質が第一」ではない人選も必要になる。

国内外のガバナンスに詳しい、大和総研の鈴木裕主席研究員は「アメリカでも、数合わせで女性を社外取に起用することは、普通にあるようだ。女性の社外取の報酬の平均は男性の平均よりも低い、という研究結果もある。これは、能力重視で選んだわけではないから高い報酬を出さなくてもいい、という考え方のためではないか」と指摘する。

また、実は欧米の企業でも、いわゆるセレブリティと呼ばれるような人が取締役に就くケースも珍しくはない。たとえば、グッチやサンローランなどの高級ブランドを展開するフランスのケリング社は2020年から、俳優のエマ・ワトソン氏を社外取に起用している。

鈴木氏は、こうしたセレブリティの起用を必ずしも否定はしない。「俳優などの有名人は自分のレピュテーションを非常に気にする。社外取を務める企業でまずいことが起きれば、自身が大きな不名誉を被りかねない。だから、きちんとチェックをする理由がある。ある程度、会社と距離感を持ってモノを言える意味でも、社外取にふさわしいのかもしれない」と話す。

社外取を評価する仕組みが必要

逆に、どれだけ立派な経営経験、経営能力があっても、会社や経営陣と距離が近いような人であれば、社外取としての責任を果たさないおそれがある。社外取になってからの実際の取り組みに何らかの形でしっかり焦点をあてることが、やはり大事なようだ。

プロネッドの酒井功社長は「取締役会の中には指名委員会(取締役の選任や解任を決定する権限を持つ機関)があるが、指名委員会が個々の取締役の評価をきちんとやるようにしたほうがいい。そのうえで、低い評価がついた人は、もう取締役には再任しないようにすればいいのではないか」と提言する。

女性の取締役への登用は本来、それ自体が目的ではなく、経営の適正化やガバナンス向上のための手段だ。目標や基準を作る政府や東証、当事者である企業、機関投資家はそこに立ちかえり、取締役を適正化させるための取り組みを考える必要がある。

奥田 貫 東洋経済 記者

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おくだ とおる / Toru Okuda

神奈川県横浜市出身。横浜緑ヶ丘高校、早稲田大学法学部卒業後、朝日新聞社に入り経済部で民間企業や省庁などの取材を担当。2018年1月に東洋経済新報社に入社。

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