スズキ、上り調子でも「減益計画」を打ち出す真意 足元の利益よりも成長投資を急ぐ事情とは

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スズキが今年1月、インドでのイベントで公開したEVコンセプトモデル「eVX」。左は鈴木俊宏社長(写真:スズキ)

インド事業を軸に業績好調なスズキ。だが、2023年度(2024年3月期)は、会社計画上では営業減益を見込んでいる。その背景には、何があるのか。

「2022年度(2023年3月期)が増収増益になったのは、記録的な円安(の追い風)が一番大きかった。実力値という点でみると、成長戦略に向けた取り組み、技術開発や設備投資がまだまだできていない部分がある。それが利益の上乗せにもなっている」

スズキが5月15日に開いた2022年度決算のオンライン会見で、鈴木俊宏社長は特に喜びを見せることはなく、淡々と振り返った。

2022年度業績は、半導体不足での生産制約が大きかったために低調だった前年度から、各段階の利益が大きく伸びた。本業の儲けを示す営業利益は前年同期比83.1%増の3505億円で、2017年度(2018年3月期)の3741億円に次ぐ過去2番目の高水準。経常利益は同45.6%増の3828億円、純利益は同37.9%増の2211億円で、ともに過去最高だった。

営業利益は鈴木社長の言葉どおり、円安効果により1006億円も押し上げられた。その一方、原材料価格の高騰による押し下げ影響が939億円あった。つまり、外部要因のプラスマイナスはほぼ相殺される。それでも営業利益がしっかりと伸びたのは、厳しい自己評価とは裏腹に、中身のある成長があったからだ。

量も質も大きく良化した

2022年度の世界での新車販売台数は前期比10.8%増(29.3万台増)の300万台に伸ばし、前期比で953億円の増益要因となった。また、スズキが「売上構成変化等」という括りで開示する項目は1468億円の増益要因になっている。これは、1台当たりの儲けがより大きい、付加価値の高い車の販売割合が増えていることを意味する。一言で言えば、量も質も大きく良化した、ことになる。

牽引役となったのが、スズキの世界販売台数の過半を占める大黒柱のインドだ。2022年度のインドでの販売台数は前期比20.5%増(28万台増)の164.5万台だった。また、伸び率が高かったのはアフリカで、前期比33.5%増(2.9万台増)の11.5万台となった。

2023年度も、インドでの販売台数は堅調な増加を見込んでいる。ただ、インドの競争環境に目をやると、鈴木社長の発言の意図が見えてくる。

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