スバル、国内でEV40万台生産体制を構築する勝算 税額控除対象となるアメリカ現地生産は示さず
世界で電気自動車(EV)へのシフトが加速する中、出遅れていた日本勢から巻き返しの動きが出始めている。
SUBARU(スバル)は5月11日、2026年までに電気自動車(EV)を4車種に増やし、世界で年間20万台の販売を目指すと発表した。現在のEVのラインナップはトヨタ自動車と共同開発し、2022年から販売する「ソルテラ」の1車種のみだが、新たに3車種のスポーツ用多目的車(SUV)を投入する。
EVの生産体制も急ピッチで整備する。2025年ごろに矢島工場(群馬県太田市)でガソリン車とEVの混流生産を開始し、2026年にはEVの生産能力を年間20万台まで引き上げる。2027年以降には大泉工場(群馬県大泉町)に生産能力が年間20万台のEV専用ラインも新設する。
昨年5月に初めてEVの生産計画を発表したが、その時点では矢島工場の生産能力は年間10万台としていた。今回の上方修正で、国内のEVの生産能力は2028年以降に年間40万台になる見通しだ。
アメリカでのEV生産計画は示されず
2023年3月期の総生産台数は87万台、コロナ禍前でも約100万台だったスバルにとって、この規模のEV生産能力確保は大きな決断である。では、これでEV戦略が明確になったかというとそうではない。肝心のアメリカでのEV生産計画が未定だからだ。
アメリカは、スバルにとって世界販売台数の7割を占める最重要市場。そのアメリカ向けには、当面は群馬県内の2工場で生産したEVを輸出することになる。しかし、それでは現地での販売で大きなハンディを負いかねない。
アメリカでは2022年8月に成立したインフレ抑制法(IRA)によって、北米で生産された車両で、かつ電池の部品や材料で一定の現地調達率を満たすEVのみ、1台あたり最大7500ドル(約100万円)の税額控除の対象となる。逆にいえば、北米域外で生産されたEVは税額控除を受けられず、相対的に不利になることを意味する。
IRAの条件はどのメーカーも同じ。ただ、前述のようにアメリカ市場への依存率が極めて高いスバルが受ける影響は特に大きい。
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