中国のEV(電気自動車)最大手の比亜迪(BYD)が、南米チリにリチウムイオン電池の正極材料の工場を建設することがわかった。
チリ経済省傘下のチリ産業開発公社(CORFO)は4月19日、BYDの現地子会社を「リチウム生産企業」として認可したと発表した。CORFOによれば、BYD(の現地子会社)は電池原料の炭酸リチウムを2030年まで毎年約1万2500トン、優遇価格で調達する権利を獲得したという。
BYDに炭酸リチウムを供給するのは、チリのリチウム生産大手のSQMだ。その見返りとして、BYDはリン酸鉄系リチウムイオン電池の正極材料の工場をチリに建設することに同意した。新工場の計画生産能力は年間5万トン、総投資額は2億9000万ドル(約390億円)以上を見込み、2025年末の稼働を目指している。
(訳注:BYDはもともと電池メーカーとして創業し、2003年に自動車に参入した。EV用の車載電池を自社で開発・生産している)
CORFOは2022年8月、チリで車載電池や電池材料の製造を望む企業に対し、SQMの炭酸リチウムを優遇価格で提供する方針を打ち出した。海外の電池関連企業の進出を促し、チリ国内で付加価値や雇用を生み出すためだ。BYDの電池材料工場は、その認可を受けた第1号である。
「インフレ抑制法」に対応
チリは世界最大のリチウム埋蔵量を持ち、生産量ではオーストラリアに次ぐ世界第2位だ。それに加えて、チリには電池関連企業の投資を引きつけるもう1つの魅力がある。チリはアメリカと自由貿易協定を結んでおり、チリで生産された電池原料はアメリカの「歳出・歳入法(インフレ抑制法)」の原産地条件を満たすことだ。
(訳注:インフレ抑制法の規定により、アメリカの消費者はアメリカ本土で製造されたEVを購入する場合、最大7500ドル[約101万円]の税額控除が受けられる。ただし、電池の原材料の一定比率以上をアメリカ本土またはアメリカが自由貿易協定を結ぶ国から調達することが条件になる)
「わが社はアメリカに電池工場を建設しようと考えているが、アメリカ市場でEVを販売する計画はない。インフレ抑制法への対応法も検討中だ」。BYD副総裁(副社長に相当)の李阿氏は2022年12月、メディアの取材に対してそう発言していた。
BYDがチリの工場でSQMの炭酸リチウムを使った正極材料を生産し、それをアメリカに輸出して電池を生産すれば、インフレ抑制法のハードルをクリアすることになる。
(財新記者:蘆羽桐)
※原文の配信は4月20日
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら