社外取締役に「女性アナウンサー起用」の是非 女性登用で先行する欧米ではセレブの社外取も

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この点について四電工は、「スキルマトリックスを活用し、バランスを重視している。確かに経営的な判断力が高い方も大事だが、それ以外にも必要なスキルはある。さまざまな経験、知見がある人をメンバーに入れることで、取締役会全体として最適な構成になることを目指している」(広報・IR担当者)と答える。経営に関する判断をするうえで必要な情報や知識は、就任後にきちんとレクチャーをするのだという。

もちろん、経歴や属性だけで、就任前から社外取の適性があるかないかをジャッジすることはフェアではない。ただ、厄介なのは、外部からは社外取の「仕事ぶり」を測るのが困難なことだ。大半の企業では、社外取締役が企業価値の向上に実際に貢献したのか、どういう役割を果たしたのかがわかるような材料、情報をほとんど公開していない。

オープンになっているのは取締役会への出席率と、たった数行の簡単で抽象的な実績紹介くらい。それが株主総会招集通知に載っている程度だ。つまり、社外取が本当に役割を十分に果たしているのかどうかは事実上、ブラックボックスの中にある。

一方、外面を問うプレッシャーは強まるばかり。前述のCGCにより、機関投資家は、女性取締役のいない企業に対して株主総会での議決権行使で、「代表取締役の選任案に反対票を投じる」といった厳しい行動をとらざるを得なくなってきている。そうしなければ、機関投資家自身が「投資先のガバナンスチェックをしていない運用会社である」というふうに、外部から悪いレッテルを貼られかねないためだ。

取締役に女性がいないと株主総会で反対票

機関投資家に多大な影響力を持つ議決権行使会社のうち、アメリカ大手のグラス・ルイスは2022年から、アメリカのインスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)は今年から、女性取締役がいない企業の代表取締役の選任案に反対票を投じることを機関投資家に推奨してもいる。

企業側からすれば、社外取の適性や能力がどうであるかは外からはチェックされない(できない)のに対し、少なくとも外面だけは整えなければ、大変なことになりかねない。

仮に企業が内面を重視しようとしても、肝心の女性の社外取の適任者は不足しているようだ。企業統治助言会社のプロネッドの調査(2022年7月1日時点)によると、東証プライム上場企業1829社で社外取を務める6975人の27.4%にあたる1911人が上場会社役員経験者。だが、女性の上場会社役員経験者の割合は同1.6%にあたる111人しかいない。そもそも長らく男性中心だった企業が多く、経営に携わってきた女性自体が少ないからだ。

こうした状況の中で、企業側には「数合わせ」でも女性の社外取を確保しようとする動機がある。女性の著名人は話題になりやすいが、一般人でも「適性ありきなのかは一見、疑わしい」女性が社外取に登用されるケースはあちこちでありそうだ。

もとをたどれば、女性の取締役などへの登用を求めるCGCや政府方針は、欧米に追従したもの。それでは、欧米での実情はどうなっているのか。

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