社外取締役に「女性アナウンサー起用」の是非 女性登用で先行する欧米ではセレブの社外取も
企業経営とは一見、縁遠そうな女性の著名人が、社外取締役に起用されるケースが目立ってきている。こうした人選に問題はないのか。海外との比較も交えて探った。
今年6月下旬に開かれる株主総会では、四国電力グループで設備工事会社の四電工がフジテレビジョン出身でフリーアナウンサーの戸谷美奈子(中野美奈子)氏を、自動車メーカーのスズキが元マラソン選手でオリンピック金メダリストの高橋尚子氏を、新たに社外取にする選任案を出す予定だ(高橋氏はスターツコーポレーションに次いで2社目)。
この1、2年で見ても俳優、アナウンサー、元スポーツ選手などが東証プライム上場企業の社外取に就いている。
背景には、欧米の影響も受けて2021年に改訂されたコーポレートガバナンス・コード(CGC)や、政府の方針により、女性を取締役に登用する流れが強まっている事情がある。具体的には、CGCでは「取締役会の実効性確保の前提条件」として多様性を求めている。その筆頭がジェンダー、つまり女性の登用だ。政府は2030年までに、プライム市場の上場企業の役員の女性比率を30%以上にする目標を掲げる。
最適な業務執行の決定やリスク回避につながる
CGCではこのほか、社外取の比率を3分の1以上にすることを求めてもいる。女性を社外取に登用すれば、一度に「女性登用」「社外比率」という2つの要求を満たせる。
内閣府の資料などによると、女性の登用は、取締役の構成員を多様化し、さまざまな観点、価値観から意見を出してもらうことで最適な業務執行の決定やリスク回避につながる、という。
戸谷氏を起用する四電工は、社員の9割が男性で管理職の女性比率が3%しかないことなどから「女性のキャリアデザインの面での助言を得たい」(広報・IR担当者)と説明している。
こうした「女性社員の活躍推進」のほか、「多様な視点から商品提案やESGに関してアドバイスを求めたい」などという理由は、企業が女性の著名人を社外取に起用する際によく使う。だが、そのような内容ならば社外取ではなく、アドバイザーの立場でもできる。
社外・社内を問わず、取締役の重要な仕事は、取締役会に出席して意見を述べたり、重要な意思決定事項に対して賛成、反対の票を投じたりすることのはず。「ビジネスの世界に身を置き、マネジメント経験をした」ことがなく、会計や法律の専門知識があるわけでもない人に、高度な経営判断や経営監視ができるのか。一般的には疑問が生じる部分になるだろう。
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