すぐ「他社の成功事例」に飛びつく人が残念な理由 リサーチのプロが教える正しい「事例」の使い方

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考える男性
他者の成功事例ほど注意して眺めるべきです(写真:metamorworks/PIXTA)
ビジネスでは事前のリサーチが欠かせない。そしてリサーチで得た他社の成功事例を見て「これはいい。わが社も同じようにしよう」と考える人も少なくない。だが、そうした行動が報われることは少なく、多くの場合は「こんなはずではなかった」という結果に終わる。なぜか。『外資系コンサルのリサーチ技法〔第2版〕』(東洋経済新報社)の編著者でもあるアクセンチュアの上原優氏が、リサーチで得た「事例」の正しい使い方を解説する。

事例というのは、ある人(会社)がこんなことをしてこんな結果が得られた、という過去の具体的経験です。自分では経験したことがない行動を実行に移す意思決定をする前に、過去の他者の成功事例を見て安心したいという気持ちは十分に理解できます。しかし、他者の成功事例ほど注意して眺めるべきです。それには、いくつかの理由があります。

他社の事例が鵜呑みにできない理由

外資系コンサルのリサーチ技法(第2版)
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まず、外部に出ている成功事例には、公表するだけの意図があります。成功事例が公表されている媒体に着目すれば、その意図は自ずと見えるはずです。

次に、成功に至った要因が意識的/無意識的に捨象されている、という点です。秘密にすべき成功要因を積極的に外部公表するとは考えにくいですし、また事例を語る本人なりの抽象化がすでに加えられている、とも言えます。

さらにいえば、成功たらしめた決定的要因が明確でないことも十分に考えられます。成功事例というのは、極論をいえば、「失敗事例で発生したような、失敗につながる原因がいずれも発生しなかった結果」とも言えます。これが成功の要点だった、と特定されていたとしても、いわゆる‶生存バイアス"がかかっていると見るべきです。

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