すぐ「他社の成功事例」に飛びつく人が残念な理由 リサーチのプロが教える正しい「事例」の使い方

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自然科学であれば、AというアクションをしてBという結果が得られた実験で、前提条件が同じであれば何度試しても同じ結果が得られます。

一方、ビシネスの世界においては、ある企業がAというアクションをしてBという結果を得たとしても、他の企業が模倣してBという結果が得られないことが多いのです。現実には影響を与える条件が複雑に絡み合っており、簡単に再現できません。個別事例ごとに状況が異なるため、前提条件を揃えた試行結果を統計的に有意なほど集めるのはとても困難ですし、厳密に因果関係を証明できる決定事例も、ほとんどないと考えるべきでしょう。

一方、失敗事例の「失敗した原因」は、複合的であるものの明確に存在します。それゆえ、同じ轍を踏まないという意味で失敗事例から学ぶことは多いのですが、好き好んで自分の過ちを公表する人は少ないので、失敗事例は通常公表されることはあまりありません。

何かの巡りあわせで失敗事例を得ることがあれば、何が失敗を招いたのかよく傾聴し学ぶべきです。ただし、成功事例があるからやってみよう、が避けるべき短絡であるのと同様に、失敗事例があるからやめておこう、という判断もまた避けるべきです。

事例の正しい使い方

成功事例であれ失敗事例であれ、そっくりそのまま真似るのではなく、アクションを考えるための抽象化されたきっかけや切り口を掴むものと捉えるべきです。

たとえば、あるメーカーが消費者との直接的なつながりを求めてFacebookにファンページを開設しました。そのメーカーが取り扱う消費者向け商品自体は人気があるものの、企業と消費者とのつながりの強さを表す指標の一つであるフォロワー数は一向に増えません。実際にファンページを見てみると、企業からの一方的なキャンペーン通知や新商品紹介だけが発信されており、消費者との双方向的な対話になっていませんでした。これでは盛り上がらないのも当然です。一方、別のメーカーは、商品に対する不満コメント一つひとつに「なぜそうなっているのか」「今後どうする予定なのか」を真摯に返信しており、急速にファンを増やす結果となりました。

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