すぐ「他社の成功事例」に飛びつく人が残念な理由 リサーチのプロが教える正しい「事例」の使い方

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この場合、成功事例だけに頼って教訓を得ようとすると、「一つひとつ返信すれば成功する」にとどまりがちです。しかし、仮に一つひとつ返信したとしても、機械的な回答であればすぐに消費者は離れていってしまいます。

むしろ、失敗事例と成功事例とを対比させて考えると、双方向的な対話というソーシャルネットワーキングの最も大きな特徴を的確に捉え、「消費者一人ひとりと等身大で向き合って会話する」姿勢こそが重要な成功要因だとわかります。そう捉えれば、「一つひとつ必ず返信しなければ」という単純な模倣を超えて、「社員の個人名で語る」あるいは「人間味のあるキャラクターが発信する」「自社に関係のある宣伝ばかりでなく折々の話題について語りかける」など、打ち手に幅が出てくるはずです。

抽象化してヒントをつかむ

抽象化してエッセンスを適用することが事例の正しい使い方であるとすると、学ぶべき事例は必ずしも自社の業界にこだわる必要はありません。たとえば、いまや子どもからお年寄りまで幅広く人気の「回転寿司」ですが、考案したのは、大阪で立ち食い寿司店を経営していた白石義明さんという方でした。お店の人件費に悩んでいたところ、アサヒビールの工場見学でベルトコンベアを見て、「寿司を回転させれば、運ぶ手間がかからない」と思いついたとのこと。1958年にオープンした日本初の回転寿司店はたちまち話題となり、大阪万博での注目もあってその後全国的に広まっていきました。

自社の置かれた業界では思いもよらないことが、まったく別の業界では先取りで挑戦されていたり、すでに常識だったりということがあるので、視野を広げて教訓や気づきになる事例を探すことが有益です。

上原 優 アクセンチュア ビジネスコンサルティング本部 マネジング・ディレクター

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Yu Uehara

東京大学文学部卒。大手消費財メーカー・小売チェーンを中心に、中長期戦略立案、全社事業構造改革、M&A、新規事業開発、営業改革、調達機能強化、デジタル・ソーシャルテクノロジー活用など幅広く支援。クライアントとの合弁会社における執行役員CSOを務めるなどハンズオン型の支援を多数経験。都内国立・私立大学でのセミナーなど社外での活動にも注力。

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