大インフレ時代にチェックすべき経済指標の順番 日本の経済指標やGDPは最重要ではない理由
このように、消費する側ではなくモノやサービスを提供する側の状況を国別で把握する際には、国の経済構造の違いによって、製造業を重視するのか、それともサービス業を重視するのかが違ってきます。たとえば製造業であれば、前述したように中国が世界で最も多くのモノを作り、世界中に輸出していますから、鉱工業生産や製造業PMIは、まず中国の数字を見る。そして日本、ユーロ経済圏、最後にアメリカという順番で見ていきます。
またサービス業については、これはもう圧倒的にアメリカです。最近は徐々に日本もサービス業分野が伸びてきていますが、アメリカにおける個人消費は非常に規模が大きく、それだけに世界経済にも大きな影響を及ぼしますから、アメリカのサービス業PMIはしっかりチェックしてください。
GDPは遅行性の強い経済指標
その他にも細かい経済指標はたくさんありますが、基本的には以上に説明してきたような、雇用と物価、個人消費、生産関係の経済指標を押さえておけば第一ステップは完了です。
それ以外の経済指標について敢えて申し上げるなら、日本の場合だと「有効求人倍率」が国内景気の動向を把握するのに多少役立つことがありますし、外国人投資家が好きな日本の経済指標として、「日銀短観」も挙げられます。
日銀短観は、外国人投資家の間でも「TANKAN」といって、日本語のまま通用するくらいよく知られている経済指標です。外国人投資家が常にチェックしている以上、その動向がマーケットに及ぼす影響も大きいと思われるので、一応、目を通しておいたほうが良いかも知れません。
また、新聞の1面トップに大きな見出しで掲載されることの多い「GDP(国内総生産)」は、経済規模の実態を把握するうえで正確かつ重要な経済指標ですが、四半期に1度の公表ですし、たとえば1~3月期の数字が4月に発表されるので、遅行指数であることを理解したうえでチェックすることが肝心です。
発表されたGDPの結果を見て、マーケットが大きく動くことは、過去においてもほとんどありませんでした。マクロ経済分析を生業にしている人ならともかく、株式投資やFXで資産を増やしたいという人にとっては、それほど重要なものではありません。
そのほか、過去からの推移を把握しておく必要があるものとしては、「経常収支」があります。経常収支とは、海外との貿易や投資で日本がどれだけ稼いだかを示す数値。株価に及ぼす影響はそれほどでもありませんが、FXで通貨の売買をしている人は、一応、目を通しておくことをお勧めします。
というのも、過去からのトレンドを見て、経常収支の黒字が減少したり、赤字に転じたりしたとき、為替レートに影響を及ぼすことがあるからです。なかでも日本の経常収支の数字が悪化に向かっているときは、ほとんどの局面において円が売られています。
以上、ざっと経済指標の「全体像」を説明しました。
経済指標はこれからの相場の転換点を教えてくれます。投資をしている人はもちろんのこと、ビジネスの最前線に立っている人も、転換点のタイミングと、その後の方向性を把握するうえで、経済指標をチェックする習慣を付けておきましょう。
(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)
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