大インフレ時代にチェックすべき経済指標の順番 日本の経済指標やGDPは最重要ではない理由

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基本的に低インフレのときには、これらインフレ関連の経済統計は、ほとんど注目されません。ただ、2022年のようにインフレが昂進すると、金融政策の変更が行われるので、一気に注目度が高まります。

またアメリカでインフレが生じている際は、それがアメリカ国内特有の現象なのか、それとも世界的にそういう傾向があるのかを把握しておく必要がありますので、アメリカの物価動向をチェックしたら、それに続いてユーロ圏、日本、中国の順でインフレ率を見ていきます。

鉱工業生産は中国と日本の数字に注目

雇用統計や物価、小売売上高は、総じて個人消費の強さに関係してきます。雇用の良し悪しは個人消費に影響しますし、消費者物価があまりにも高騰すれば、消費は徐々に落ち込んでいきます。また、個人消費が落ち込めば、小売売上高は自然と低迷していきます。

こうした個人消費の良し悪しに対して、モノを生産する動きがどうなるのかを見るのに重視したいのが、「鉱工業生産」です。

ただし鉱工業生産は、アメリカよりも中国の数字のほうが重要です。なぜならアメリカの場合、産業構造がサービス業寄りになっていて、製造業がGDPに占める比率が低いからです(2020年時点、10.8%)。この点、中国は世界の工場として、さまざまなものを作り、世界中に輸出しているため、中国の鉱工業生産は、製造業から見た世界経済の先行指標になります。GDPに占める製造業の比率で言えば、中国に次いで日本、ユーロ圏、そしてアメリカという順番になります。

製造面で鉱工業生産の次に注視したいのが「PMI(Purchasing Managers’ Index:購買担当者景気指数)」と呼ばれるものです。PMIには総合PMIと製造業PMI、サービス業PMIがあります。これはその国々の経済構造によって見分けると良いでしょう。たとえば中国や日本であれば製造業PMIが中心になり、アメリカであれば製造業よりもサービス業が中心になるので、サービス業PMIをチェックすることになります。なおPMIは、アメリカでは公表している組織の名前からISMとも呼ばれています。指しているものは同じです。

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