「就活を親がサポート」過保護といえない切実事情 大学のキャリアセンターを頼れなくなっている

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もちろん、一流企業に入ってもらえれば大学としては実績となり、入学者数の増加につながるでしょう。しかし、キャンパスによっては、何千人もの学生を数名の職員で対応している状況です。

そんな激務の中で、「(すでに1社内定しているか、選ばなければ1社は内定を取れそうな学生が)よりよい企業から内定を得るためのサポート」よりも、「(内定のない学生が)とにかく内定を得るためのサポート」が優先されるのは仕方のないことだと思います。

とくに、うつや自殺未遂など、精神的に重度の悩みを抱えた学生が訪れた場合は、その方々の優先順位は必然的に上がります。実際、当スクールの学生がキャリアセンターを訪れたところ、隣のブースからすすり泣く声が聞こえてきて、自分の相談事に集中できなかったと言っていました。このように、早急な対応が必須の学生がいれば、一般の学生の優先順位は低くなりがちです。

結果、大学のキャリアセンターで行なうことは、1人ひとりへのきめ細かい一流企業の選考対策ではなく、最低限の底上げの対策がメインになります。これでは、一流企業を目指す多くの学生には「頼りにならない」と感じられるでしょう。

学生が就活について相談できる場所は「ほぼない」

2つめの理由は、サービス内容への不満です。

個別の企業対策をしてくれないとなれば、学生がキャリアセンターを利用する目的は、「OB・OG名簿」「求人票」「個別相談」がメインになるでしょう。

しかし、当スクールの学生によると、キャリアセンターのOB・OG名簿の多くはほとんど機能しておらず、求人票はだいたいが学生には聞いたことのない企業のものだといいます。時折ブラック企業が混じっていることさえあるようです。

また、相談をしても、的確なアドバイスが返ってこないことも多いと言っていました。この背景には、大学のキャリアセンターのスタッフの多くが民間企業での勤務経験がない人で占められていたり、派遣社員・嘱託社員で運営されていたりする、ということがあるようです。

3つめは、大学のキャリアセンターは無料のため、予約がパンパンでなかなか相談できないとのこと。

要するに、多くの学生は、キャリアセンターや就職課を、「そもそもサービス自体が受けにくく、受けられても目的の情報は得られない。自分の期待するサービスがない」と評価しているわけです。

私自身もキャリアセンターの実態を確かめようと、いくつかの大学のキャリアセンター職員と面会しました。大学やキャンパスによってその実情は異なるようですが、おおむねどこも、学生が満足できるサービスを提供できる環境が整っているとはいえない状況でした(このテーマに関しては、『大学キャリアセンターのぶっちゃけ話』(沢田健太著)が、大学のキャリアセンター職員の立場から書かれていて参考になります)。

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