ごみを「直接埋立て」も90年代の東京の衝撃光景 残余年数50年超も東京港にはもう埋立て場所なし

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この集水池に集められた浸出水は、ポンプを使って埋立地内にある2つの調整池へと送られる。2つ合わせて15万㎥である。

調整池で浸出水を混合して10日程置いて水質を均一化した後、中央防波堤内側埋立地にある排水処理場で薬剤を多用した生物処理や物理化学処理を施し下水道に放流している。

その後、砂町水再生センターでさらに処理されてから、東京港に放流されている。このように、浸出水が万全に管理されているがゆえ生活環境は汚染されず、私たちが安心して生活できている。

中央防波堤外側埋立処分場にある調整池(写真:東京都環境局のHP)

なお、東京港の最終処分場の中で、浸出水などへの環境への対策が施された「管理型最終処分場」となったのは、中央防波堤内側埋立地が初めてであった。それまでに埋め立てられていた14号地夢の島では浸出水処理施設がなく、浸出水対策は十分ではなかった。

現在埋立てが進む中央防波堤外側埋立処分場や新海面処分場では、ケーソン(砂や鉱滓を詰めたコンクリート製の箱)式護岸や、鋼管矢板を海底地盤まで打ち込んだ二重鋼管矢板式護岸により浸出水の漏れを防いでいる。

最終処分場の見学のススメ

私たちにとって遠いところにある最終処分場だが、そこの管理者が清掃事業やごみ排出への理解を深めてもらうことを意図し、一般人に対して施設見学の機会を提供している。本稿で取り上げた東京港の埋立処分場(中央防波堤外側埋立処分場)については、「清掃工場・埋立処分場見学会」として、大型バスで巡る見学会を東京都環境公社が開催している。

午前中は清掃工場を見学し、午後からは庁舎で環境学習をした後、バスの車窓から不燃ごみ処理センターや粗大ごみ破砕処理施設を見て、中央防波堤外側埋立処分場を見学するコースとなっている。まさに「インフラツーリズム」、「大人の社会見学」であり、大変充実した内容となっている。

抽選であるため応募者全員が参加できるわけではないが、一人でも多くの人が見学し、自ら排出したごみの行き場の現状を見て、その歴史や仕組みを学ぶことで、最終処分場には限りがある点を強く意識することになるだろう。そしてごみ減量を真剣に考えるきっかけを持ってほしく思う。

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藤井 誠一郎 立教大学コミュニティ福祉学部准教授

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ふじい せいいちろう / Seiichiro Fujii

1970年生まれ。同志社大学大学院総合政策科学研究科博士後期課程修了。博士(政策科学)。同志社大学総合政策科学研究科嘱託講師、大東文化大学法学部准教授などを経て現職。専門は地方自治、行政学、行政苦情救済。

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