ダイソン、「家族経営だからできる」2代目の挑戦 創業者の息子が語った「ヘッドホン」開発の内幕

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ネットに接続することで、センサーが記録する情報に基づいて、バッテリーの使用状況や、モーターやブラシの稼働状況なども把握できる。長期的にモニタしていれば、性能を検証し、製品の品質をフィードバックできるほか、アルゴリズムを通じて問題の特定も可能となる。

例えば修理依頼の連絡があった場合、あらかじめ製品各部の利用状況がわかれば、問題をある程度予測できる。修理すべきか、交換すべきかを部品単位で評価し、分解する前に修理方針を決められる。製品の将来的な品質改善や次世代製品の設計に生かすこともできるだろう。

さて、ジェイクには製品レベルでのビジョンについても尋ねてみた。

Dyson Zoneは空気清浄機とヘッドホンを組み合わせた製品だが、開発に当たっては数年にわたり”高音質”について学んだという。では、”空気清浄機能を搭載しない”オーディオ機器を投入する準備はあるのだろうか。

「Zoneはダイソン初のオーディオ製品だが、音響に関する研究は何年も行ってきた。最初は空気清浄機や掃除機の騒音を引き下げるところから。ノイズキャンセリングの研究もそこから始まっている。Zoneでは高音質なヘッドホンの開発についても研究した」

ジェイクはそう振り返り、今後について次のように続けた。

「現在はイヤホン型製品に多くのニーズがあるが、多くはソフトウェアで問題解決をしている。そこに”機構設計”での問題解決を組み合わせたものはない(少ない)ね。答えは”より優れたヘッドホンの開発は進めている”だ。その成果はしばらくお待ちいただきたい」

手元に”たくさんの材料”が揃っている

Dyson Zoneと同時に発表されたロボット掃除機「Dyson 360 Vis Nav」では、魚眼レンズを用いて周囲を見渡すカメラなど、多くのセンサーを用いた新しいコンピュータビジョンのシステムが組み込まれている。

「多くのロボット掃除機は、自分自身の高さまでしか周囲を把握できていない。しかし部屋には多くのものが配置されている。われわれはそれらを適切に識別し、障害物が何であるかを分類し、どのように移動されたのかも把握できるようにした。床の状態や素材ももちろん把握して、より効率的に賢く掃除をする」

ジェイクは従来品との違いについてそう話したが、実は父のジェームズは、囲み取材でこのコンピュータビジョンのシステムについて「ほかにも応用できると考えている」と話していた。

「たくさんの応用領域がある。周囲の状況を把握、学習するシステムもそうだが、ほかにも多くの研究開発テーマがあり、それらを組み合わせることで、さらに製品領域を多角化できると考えている。家電製品も、Zoneのようなウェアラブルも同様だ。手元にはたくさんの材料(研究開発成果)が揃っている。それをどう調理していくのか、つねに挑戦を続けていく」(ジェイク)

本田 雅一 ITジャーナリスト

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ほんだ まさかず / Masakazu Honda

IT、モバイル、オーディオ&ビジュアル、コンテンツビジネス、ネットワークサービス、インターネットカルチャー。テクノロジーとインターネットで結ばれたデジタルライフスタイル、および関連する技術や企業、市場動向について、知識欲の湧く分野全般をカバーするコラムニスト。Impress Watchがサービスインした電子雑誌『MAGon』を通じ、「本田雅一のモバイル通信リターンズ」を創刊。著書に『iCloudとクラウドメディアの夜明け』(ソフトバンク)、『これからスマートフォンが起こすこと。』(東洋経済新報社)。

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