金融庁が事故車の保険修理工賃めぐり実態調査へ ビッグモーターの保険金不正問題にも波及か

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金融庁の看板
金融庁は国交省とも連携して、修理作業を担う整備業者へのヒアリングも進める(記者撮影)

金融庁は6月にも、損害保険各社が整備業者に支払う事故車などの修理工賃(レバーレート)の実態調査に乗り出す。調査の主な対象は損保各社だが、国土交通省とも一部で連携し整備業者へのヒアリングも進める方針だ。

そもそも損保各社は2023年3月以降、足元の物価高を踏まえて整備業者と修理工賃を引き上げる交渉を始めている。修理工賃の引き上げは、保険金の支払い増加を通じて自動車保険の保険料計算に影響してくる可能性があり、監督当局として実態把握を進める必要があると判断した。

今回、東京海上日動火災保険、損害保険ジャパン、三井住友海上火災保険、あいおいニッセイ同和損害保険の大手4社を中心に引き上げ交渉をしているのは、各社が自動車などの整備業者と個別に話し合って取り決め(協定)を結ぶ「指数対応単価」だ。

単価設定の仕組みとは

指数対応単価は、整備業者の人件費などを加味した作業1時間当たりの単価のこと。6000~8000円程度に設定されている業者が多いとされ、業界では工賃レート、レバーレートなどとも呼ばれる。

その対応単価に、損保各社が出資する自研センター(千葉県市川市)が作業内容ごとに細かく設定した作業時間の指数(標準作業時間指数)を掛け合わせることで、適正な修理工賃を算出。そこに交換した部品代などを加えて修理費用の総額をはじき出し、整備業者が損保各社に請求するという仕組みになっている。

そもそも損保業界は過去に、修理費用の適正化と抑制を狙って業界団体が「標準対応単価」を設定し、各社がそれをほぼ一律で整備業者に適用していた経緯がある。しかしながら、その業界慣行が独占禁止法の禁じる「闇カルテル」の疑いがあるとして、1994年に公正取引委員会から警告を受けた。以降は損保各社が物価の動向を見ながら、個別に対応単価を決めるかたちとなっている。

対応単価をめぐっては1994年以降、バブル経済崩壊による景気悪化やその後の金融危機などで国内の物価は長年下落基調で推移してきたものの、損保各社は対応単価を引き下げる改定をほとんど実施してこなかった。

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