保険営業がいまだ抜け出せない不祥事の連鎖 再発防止を妨げる大量採用・大量離職問題
「未然防止や再発防止のための取り組みが形式的・表面的なものにとどまらず、営業現場の隅々にまで浸透するよう、実効性のある管理態勢を整備・確立していくことが課題となっている」
これは金融庁が昨秋に公表した「保険モニタリングレポート」で、生命保険業界が抱える課題として記した一節だ。
大手生保を中心に、営業職員による金銭詐取事案が依然として頻発する中で、業界を挙げて取り組みを徹底するよう圧力をかける意味合いがあった。
『週刊東洋経済』4月10日(月)発売号では「保険動乱」として、契約者に加えて保険会社の営業職員が引き起こす不正行為とその舞台裏について特集している。
同レポートの公表と時を同じくして、業界団体の生命保険協会(生保協)は、営業職員の管理態勢をめぐる新たな指針の策定に着手。協会長の稲垣精二氏(第一生命会長)が旗振り役となり、営業職員チャネルを持つ20社のトップと意見交換するなど、急ピッチで策定作業を進めることになった。
生保協が新たな指針を策定
「ガイドライン(指針)として、業界に一律での自主規制を求めるのは筋が違うのではないか」
複数の生保からそうした反発の声が出る状況で、複雑に絡み合った利害関係のひもをほどくのは、簡単ではなかった。当初は2022年中に指針を取りまとめるとしていたが、実際にこぎ着けたのは今年2月になってからだ。
そのタイトルは「営業職員チャネルのコンプライアンス・リスク管理態勢の更なる高度化にかかる着眼点」。「指針」の文字が抜け落ち「着眼点」となっているあたりに、一部生保の後ろ向きな姿勢がにじみ出ている。
ただし、その中身はというと、各社が管理態勢の強化に向けて取り組む際の原理・原則を、大きく15項目に分けて詳細に記しており、後々に言い訳できる逃げ場をなくそうとしていることが伝わってくる内容だ。
協会長会社として、管理指針取りまとめに奔走した第一生命の苦労がしのばれるが、そもそも新たな指針が必要な状況をつくったのは、第一生命でもある。
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