保険営業がいまだ抜け出せない不祥事の連鎖 再発防止を妨げる大量採用・大量離職問題

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不祥事が連鎖する事態を現場の営業職員はどうみているのか。

「伝説の営業職員」と呼ばれた柴田和子氏が名誉会長を務め、生保の営業職員を中心に約4万人の会員を抱えるJAIFA(生命保険ファイナンシャルアドバイザー協会)は、「営業職員は、お客様一人ひとりに真摯に向き合い『安心』と『満足』を提供する顧客本位の活動が重要であると考えている。そのため、一部の営業職員による不祥事案が起こってしまったことはとても残念であり、今後、不祥事がなくなることを望んでいる」と文書で回答した。

生保協が策定した管理指針については、「内容に対する評価をする立場にはないが、当協会としても連携できることは連携していきたい」としている。

大量離職が招く悪弊

生保協調べの営業職員数は全国で24万人。そのうち6割強に当たる15万人は国内大手4社の営業職員が占めている。

「これだけの数がいれば、年間数件の不祥事に対して、いちいち目くじらを立てるのもどうなのか」という声が業界関係者から時折聞こえてくる。だが、生保は免許制の金融機関だ。法令順守に対する体制や意識が、その程度で本当によいのだろうか。

そもそも、不祥事が頻発する構造的な要因に対して、生保各社がどれだけ正面から向き合い、解消しようとしているのか。構造的な要因とは、営業職員の大量採用・大量退職、いわゆる「ターンオーバー問題」だ。下表でわかるとおり、入社から25カ月目の在籍率は、10年前に比べ改善してはいるものの、各社5割前後にとどまっている。いまだに、採用した人のおよそ半数が2年の間に退職してしまうという状態だ。

コンプライアンス研修で意識を徹底させようにも、短いスパンで顔ぶれが大幅に変わってしまってはどうしても実効性が乏しくなる。

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