保険営業がいまだ抜け出せない不祥事の連鎖 再発防止を妨げる大量採用・大量離職問題
今から2年半前の20年10月、第一生命は元営業職員が総額19億円の金銭詐取事件を引き起こしたと公表した。元職員は、特別調査役という第一生命で唯一与えられた肩書を利用し、「特別調査役に特別な特権・権限が与えられた。私にお金を預けたほうがよい」などと言って、顧客などに架空の投資話を持ちかけては金銭をだまし取っていた。
全国で約4万人いる営業職員の中で、優秀成績職員として第一生命の新聞広告にもたびたび登場していただけに、一営業職員の不祥事では済まされず、稲垣氏は当時社長として謝罪会見に追い込まれている。
金銭詐取事案が頻発
その後、事態を重くみた金融庁は生保協を通じて、営業職員の管理に関する実態調査に踏み切ることになった。
21年4月に公表した実態調査では、19億円の金銭詐取事件を「特異な事例」としたうえで、当時の根岸秋男会長(当時の明治安田生命社長)は営業職員の管理について「各社に共通する課題や見直すべき問題点、また業界として課題視すべき事態は認められなかった」という発言をしていた。
ところが、それ以降も第一生命をはじめとして、金銭詐取事案が各社で継続的に発生。「いったい何をもってして、課題が認められなかったと言っていたのか」(金融庁幹部)と、金融庁の不興を買うことになった。
さらに金融庁と生保協は、22年1月にかけて2度目の実態調査に踏み切り、それが新たな管理指針を策定する契機になった。
指針を公表した直後の今年3月には、日本生命の長崎支社の元営業職員が、架空の保険商品を提案するなどして、約1530万円をだまし取る事案が発覚している。
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