「後輩を演じられる」新人が配属後にうまくいく スージー鈴木さんが「新人たち」へ伝えたいこと

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新人が求められがちな、基礎的な情報/データ収集なんて仕事は、これはもう、ピュアにアイデアそのものが問われます。どういう視点でデータを集めて、どういう順序でデータを整理するか。これは多分、AIには出来ないもののような気がします。

というわけで、新人時代から、すべての仕事にアイデアを入れ込もうということなのですが、ここでは、もっと意識を高く設定することを要求したいと思います。

──「1つの仕事にスプーン1杯の自己顕示欲を」。

そうです。求められた仕事すべてにおいて、あなたの個性、趣味、関心事……自我を表明するのです。スプーン1杯でもいいから、そのコピー、その議事録、そのデータ収集に自己顕示欲をまぶすのです。

ギターを弾きながら、漫談プレゼン

具体的に説明しましょう。私は若手時代から野球好きでした。単に好きに留まらず、「野球について見識を持っている奴がいる」として社内外で知られて、あわよくば、野球に関する仕事を社内外からいただこうと狙っていました(広告会社にはよくしたもので、野球に関連する仕事もたくさんありました)。

なので、いきおい自分のアウトプットに野球のアナロジーを入れ込むのです。企画書の中で、得意先の競合ブランドを野球選手に喩えたり(例:「Bブランドは中日の井端弘和みたいにしぶとくシェアを守っています」)、1年間の広告計画を球種に喩えるプレゼンをしてみたり(例:「導入最初の3カ月は150キロのストレートで若者向け認知を高めて、次の3カ月はスローカーブみたいに緩急を付けて、シニア層にジワジワ広げていきましょう」)。

今でも、よく出来たアナロジーだと思っているのは、マーケティング局の局長時代に部門方針として表明した理想の局員像=「1番・捕手」。1番バッターのように俊足巧打、市場や社会の新しい潮流を鋭敏に捉えながら、それでも営業や制作などチームメンバーと同一平面に立たず、まるでキャッチャー(つまりは野村克也)のような俯瞰的視点から、全体のフォーメーションを指揮する立場になろうという方針。

しかし、野球リテラシー(もしくは「組織論リテラシー」?)の低い、当時の役員から「なぜ4番打者を目指さないんだ?」と諭されたりして、げんなりしたものですが。

音楽関係で言えば、忘れられないのは、ギターを弾きながら、まるでギター漫談みたいなプレゼンをしたことです。

得意先はレコード会社。ある洋楽アーティストのベスト盤のプロモーション戦略に関する競合プレゼン(複数の広告会社が提案して、1社が選ばれるというプレゼン形式)でした。

私たちは、ベスト盤のターゲットを3層に分けて、それぞれの属性をコード(和音)で表現したのです。「コア層の属性は、コードで言えば【E+9】(じゃらーん、と実際に弾く)。サブ層は【E7】(じゃらーん)、一般層は【E】(じゃらーん)」。得意先はあっけに取られていましたが、でもそのプレゼン、見事に勝ちましたよ。

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