コード書き続けた世代に迫られる「AI時代」の変革 「プログラマーの本質に立ち返る時が来た」
——お二人は今、ソニックガーデンで受託開発に従事していると思いますが、生成AIが受託開発業務に与える影響をどのように見ていますか?
伊藤:僕らはお客さまと直接対話しながら「こんな機能が欲しい」「こんな課題に直面している」といった声を聞いて、システムに実装していくわけですが、こうした日々の何気ない対話にさえ、10年近い蓄積があります。
システム開発はプログラミングだけで成り立っているわけではありません。そう考えると定型的なプログラミングの一部を生成AIに任せることはあっても、それ以上の業務を託せるまでには相当な時間がかかるでしょうね。
これまでに書いたコードを読み込ませることはできるでしょうが、データになっていない記憶や対話のなかに隠れているコンテクストまで、漏れなくプロンプトに打ち込むなんてできません。もしそれが可能になったときは、潔く他の仕事を探します(笑)。
遠藤:生成AIの進化がパラダイムシフトを起こしつつあるとは思いますが、それが産業革命並の変革をもたらすかは誰にも分かりません。
ただ、伊藤が言うようにプログラマーはコードを書くこと以外の部分で、市場価値を見いだしていくことになるというのは、正しい見立てだと思います。そもそもプログラマーはじめ、エンジニアは顧客やビジネスサイドの願いをテクノロジーで形にするのが仕事。
コードを書くことはそのための手段であり目的ではありません。そういう意味で、生成AIをはじめとする新しいテクノロジーは、ある意味、長年システム開発に携わってきたアラフォー世代のプログラマーを「本質」に立ち返らせてくれる一面もありそうです。
今こそ、全くのゼロからトップに躍り出ることもできる
——では、プログラマーが本来果たすべき「本質的な仕事」をしていくためには、どんなことを意識できるとよいのでしょうか?
伊藤:技術を探求すること、顧客を理解すること、それを踏まえて持てる知見をシステムに実装することに対してどれだけモチベーションを高く保てるか。そういったことをまずは意識できるといいのではないでしょうか。
いずれにしても仕事以外ではコードを書きたくないとか、顧客のビジネスにも、新しい技術にも関心がないプログラマーの将来はかなり厳しいでしょう。自らの強みを磨く機会が少ないわけですから。