「生成AIでゲームキャラと対話」が困難な意外事情 スクエニの「ポートピア」デモでは雑談機能削除
「そのまま活用」はハイリスク
ーーゲーム業界における生成AI活用の可能性について、どう見ていますか。
生成AIは長期的に、ゲーム産業に大きな変革をもたらすだろう。技術的にも、ゲームに機能を組み込むこと自体は難しくない。
ただあくまで足元の状況を見ると、なかなか一筋縄ではいかない。今世の中で流行している生成AIをそのまま活用するのはリスクがあるのだ。
まず挙げられるのが、生成AIによる著作権侵害のリスクだ。
ゲームのグラフィックを作るのに画像生成AIを活用するとしよう。すでにある画像生成AIは、インターネット上の画像データを自動で大量に集めてAIの学習に使っている。すると、生成された画像は何らかの著作物を侵害している可能性がある。いくつかの画像生成ソフトを試したが実際にそのようなケースが多かった。
もしAIが生成した著作権侵害の画像をゲームに使ってしまったら、仮に法的責任を問われない場合でも、企業倫理上大きな問題となる。
また、世界観を統一することの難しさもある。ユーザーがゲームの世界に没入するためには、世界観や色調を作り込み、同じテイストで揃えることが非常に重要だ。
AIに「カエルの絵を描いてください」「犬の絵を描いてください」と個々に画像生成させるのは簡単だが、そのカエルと犬の絵を同じ世界観でそろえようとすると、統一感を出すのに苦労する。
実際に製品に使えるレベルまでブラッシュアップするためには、最終的に人間が全体を修正する作業が必要になる。これから生成AIがどれだけ進化しても、この事実はあまり変わらないだろう。
ーー結局、人の手が必要になると。
さらに、一言で生成AIを利用するといっても、生成したいものによって品質にバラツキがある。2Dの絵であれば(AIが学習に使う)画像がインターネット上にたくさんあるので、かなりの品質が期待できる。一方、ゲームを作るうえで必要な3Dデータやモーション・データは、共有されているデータがたくさんあるわけではなく、高品質な生成が難しい。
現実的な活用法としては、人間のアーティストがまずコンテンツを制作し、そのバリエーションを生成AIに作らせて、もう一度人間がレタッチして使うというかたちだ。
その点、アーティストをたくさん抱える企業にとっては、生成AIのインパクトは相対的に小さくなる。AIが人の代替となるのではなく、AIによってアーティストをエンハンス(助力)する仕組みが最も重要だ。
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