非正規31歳男性が憤る「大学図書館の働かせ方」 民間への業務委託が進むことによる「悪影響」

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カツヒサさんのことに話を戻そう。積もりに積もった不満があったというカツヒサさんは、開館日程の変更をきっかけに個人加入できるユニオンに入った。組合員になったのは1人だけだったが、職場の不満や待遇に関する要求を託してくれる同僚たちはいた。こうした声を受け、開館日程の変更にともなって何らかの割り増し手当を支払うことや、時給アップなどを会社に求めた。しかし、いずれもゼロ回答。

それどころか、業務体制の見直しを理由に、カツヒサさんを含むスタッフ数人は今年3月末で雇い止めにされてしまう。惨敗である。

「本当に業務体制の見直しに伴う雇い止めだったのか、それともユニオンに入ったことが原因だったのか。実際のところはわかりません」とカツヒサさんは振り返る。

カツヒサさんが闘った本当の理由とは

実はカツヒサさんに話を聞きながら、ある違和感がぬぐえなかった。それは、カツヒサさん自身が貧困の当事者ではないということだった。

共働きの両親のもとで育ったカツヒサさんは、地元・関西にある私立大学に入学、卒業後は大学院に進んだ。大学では映画論を専攻し、ドキュメンタリー映画や映画館運営などに関する研究に精を出した。中でも4大公害病のひとつ水俣病をテーマにしたドキュメンタリー映画については自らも上映活動に携わった。

現在も大学院に籍を置いており、図書館勤務のほかに大学の講義補助や試験監督といったアルバイトのほか、ミニシアターや美術館の受付・企画運営などの仕事で収入を得ている。年収は合わせて250万円ほどだという。

将来は何かしら映画にかかわる仕事に就きたいと語るカツヒサさん。実家暮らしで、生活に困っているわけではない。夢を抱き、いわゆる定職に就かないカツヒサさんのことを、両親も理解してくれているという。

では、なぜカツヒサさんはユニオンに入って闘ったのか。

「私たちの働かされ方が理不尽だったのは事実です。大学図書館は表向きには平和や人権、SDGs(持続可能な開発目標)などについてもっともらしく情報発信をしているのに、足元の労働環境が酷すぎるのもおかしいと感じました」

以前、自身が出入りしたミニシアターの一部でも悪質な働かせ方がまかり通っており、当時はそうした実態を見て見ぬふりをしてしまったことへの後悔もあったという。カツヒサさんは「声を上げないという選択はなかった」と言い切る。

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