カツヒサさんによると、これまでもスタッフの労働時間にかかわる変更は突然かつ一方的だった。利用者が減る夏休みや冬休み期間には月末になってから「来月のシフトはゼロ」と命じられることも日常茶飯事。かと思うと急に平日の開館時間を深夜帯まで延長すると言われたこともあった。
カツヒサさんは「労働時間を長くするにしろ、短くするにしろ、軽々しく決めていい話じゃない。特に時給で働く人にとっては、生活に影響が出る重要な問題だという認識がないんです」と憤る。
民間企業への業務委託が進んできた
開館日程や勤務時間はなぜいつも一方的に決められてしまうのか。背景には構造的な問題があるという。それは、この大学図書館の運営が民間企業に業務委託されていることだ。
全国の自治体や大学が開設する図書館では、20年ほど前から民間企業への業務委託が進んできた。コスト削減やサービス向上を図ることが目的だとされている。一方でそこで働く人たちにはどんな影響があったのか。
カツヒサさんが勤める図書館で、カウンタ―の受付や返本業務を担うスタッフは20人ほど。全員が大学から業務委託を受けた会社に雇用されるパートやアルバイトといった非正規労働者である。このうち半分が図書館司書の資格を持っている。
カツヒサさんの時給は最低賃金とほぼ同額。5年間勤務する中で、賃金アップは地域別最低賃金が改定されるタイミングに合わせて数円から数十円上がるだけだった。年収は100万円に届かないうえ、図書館側の都合で突然シフトをゼロにされるので、収支の見通しも立てられない。
また、社会保険に加入していないため、週の労働時間が20時間を超えないよう厳命されていたという。コロナ禍の中、書籍や机の消毒作業などが加わったことで仕事量は増えたのに、勤務時間は制約されたまま。作業が追い付かず、大学から「返本作業などが滞っている」と指摘を受けることもあったという。
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