院卒で就けた仕事は清掃…「宗教2世男性」の苦悩 布教を優先すべきという「エホバの証人」の呪縛

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エホバの証人から〝排斥〟された元2世信者のダイキさん。組織に対する不信感は根強いが、1人ひとりの信者には「真面目な生き方や道徳感を教えてもらいました」と感謝する (編集部撮影)
現代の日本は、非正規雇用の拡大により、所得格差が急速に広がっている。そこにあるのは、いったん貧困のワナに陥ると抜け出すことが困難な「貧困強制社会」である。本連載では「ボクらの貧困」、つまり男性の貧困の個別ケースにフォーカスしてリポートしていく。
今回紹介するのは「宗教2世の過去があり、自尊心を満たす仕事(内容、年収)に就けない。国立大の理系の修士号があるのに、プラントの清掃を日々行っている」と編集部にメールをくれた46歳の男性だ。

清掃会社に派遣された先は「母校」

国立大学の大学院では、寝る間を惜しんで研究に精を出した。しかし、卒業後の就職活動では50社近い会社から門前払いをくらう。ようやく清掃会社に採用されたものの、派遣された先は母校の研究室が入る建物だった。

担当教授に出くわしたらどうしよう。すれ違う学生の視線を感じながら、ごみ箱の中身を回収し、トイレの床にモップをかけた。

職業に貴賤はない。ダイキさん(仮名、46歳)は自分に言い聞かせながらも、こう思わずにいられなかった。「よりによってついこの間まで学者の卵として勉強していた場所での掃除……。これは学歴に見合った仕事なんだろうか」。

結局この会社は1週間で辞めた。次に就いたのは牛乳配達の仕事。ただ月収6、7万円ほどにしかならず、数カ月で辞めた。

なぜダイキさんはここまで仕事探しに苦労したのか。理由は当時、ダイキさんがキリスト教系新宗教「エホバの証人」(ものみの塔聖書冊子協会)の2世信者だったからだ。

ダイキさんによると、エホバの証人の信者は集会への参加や勧誘のための家庭訪問といった宗教・布教活動を優先するべきだと教えられる。このため時間を捻出しづらい正社員になることは勧められていないという。

就職活動中、ダイキさんは生真面目にも会社に対してエホバの証人の信者であることを明かしたうえで、残業や日曜出勤はできないと伝えた。不採用が続くわけである。ダイキさんは「このころは正直に話すのが正しいことだと信じていました」と振り返る。

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