「仕事の質とスピードを両立」するシンプルな法則 「仕事の質」は相手のニーズから逆算して考える

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この例のように、仕事の質とは高い完成度のことではなく、相手のニーズに対する合致性の高さです。しかし、残念だったAさんのような現象はいたるところで見られます。

その理由は、相手が最も必要としていることが何かを把握せずに、独りよがりの高品質にこだわっているからです。ニーズに合致していなければ、どんなに完成度が高いアウトプットでも無価値です。

どれだけニーズを把握しているかを部下に問う

「眠っているライオンよりも吠えている犬のほうがまだまし」と教えてくれたのは、シンガポールを拠点とする投資企業の役員のHさんです。マーライオンをディスったせいで天罰が下ることがないよう祈りながら言葉の意味を尋ねると、いくら立派でも使えなければ価値はなく、多少の問題はあっても使えるもののほうがはるかに価値がある、ということだそうです。

スピードが勝負を決めるビジネスの世界では、寝ているライオンには目もくれずに吠える犬を選ぶことが成功のカギとなります。そこで私たちは、どのようなときに、不完全でもスピードを優先すべきかを、普段から部下と共有しておくことが大切です。

たとえば、次のような場合です。

〇いますぐに情報が必要なとき

〇不完全でも、少なくともいまよりは業務が改善するとき

〇問題点は残っても、それ以上にいい方法が見つからないとき

〇それ以上にいい方法があったとしても、コストや時間の面で見合わないとき

〇経験則が頼りにできず、やってみなければわからないとき

〇何もしないと事態が悪化するとき

部下がニーズを把握しているかどうかは次の質問でわかります。「その件で、最も大切なことはなに?」。先ほどの証券マンの場合、正解は「すぐに回答すること」です。

このように部下が即答できればよし、できなければ相手のニーズを把握しているとは言えません。ニーズ把握の重要性を頭では理解していても、「理解している」と「できる」とは別のことです。

意味のない完成度へのこだわりを捨て、「最も大切なこと、イコール相手の譲れないニーズ」が何かにつねに意識を向けることで、かけた労力に対する相手の満足度、すなわちサービスの生産性は大きく向上します。

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