ワークマン社外役員「YouTuber抜擢」の納得理由 「プロ経営者は不要」と2年かけて探した適任者

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衣料品のネット販売事業の運営経験もある濱屋氏は、会社の“ご意見番”として存在感を高めていった。

数年前、ワークマン社内で群馬の廃校を活用したキャンプ場運営の計画が持ち上がった。経営陣も現地視察をするなど前向きだったが、社員が濱屋氏に意見を求めたところ、真っ向から反対。フランチャイズを基本とし、直営ノウハウの乏しい同社にはリスクが大きすぎるとの考えからだった。

冷静な指摘に経営陣らも納得し、結果的に計画は見送りとなった。

社外取締役候補に選ばれたきっかけは「もっと経営に踏み込んで、ワークマンに関わりたい」との思いを募らせた濱屋氏本人からの相談だった。土屋専務が「将来的にアンバサダーを社外取締役にできたら」という構想を持っていることを思い出したという。

実際、土屋専務は2020年末に行った東洋経済の取材でも「引退した加盟店OBやアンバサダーを社外取締役にしたい」と語っている。濱屋氏の申し出を受けたワークマンは、社内で検討を重ねたうえで2022年秋に本人の正式な意思の確認を行い、今回の内定へとこぎ着けた。

「社外取締役ゼロ」に迫られた変革

ワークマンは3年前まで、「社外取締役不要論」を貫いてきた。「(社外取締役がいない上場企業として)最後の1社になるまで置かないつもりだった」(土屋専務)。

2020年の有価証券報告書に記載があるように「社外取締役不要論」を社内外に訴え続けてきた(写真:記者撮影)

2020年の有価証券報告書では、社外取締役ゼロという状況について、次のように正当性を主張している。

「当社は単一事業経営と単体のみのシンプルな経営体制であり、迅速な意思決定機能を維持し、(中略)市場環境の変化にいち早く対応できる現在の体制がもっとも有効である」

ところが時代の波が変革を迫った。2021年の会社法改正により、上場企業は社外取締役の選任が義務づけられたのだ。

そこでワークマンは同年6月、以前から社外監査役(監査等委員会設置会社へと移行した2021年以降は監査等委員)だった弁護士と大手損保出身者を社外取締役に選任。これにより、取締役会を社内取締役4人と社外取締役2人の構成とした。法律やリスク管理などの面で会社に不可欠な専門的知識を持つ人ならば、社員も納得すると判断したためだ。

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