先に紹介した本の著者である鳥飼氏は、ある帰国子女グループ約200人による「帰国後の経験から子どもが外国語を始めるのに適当な時期」について調査された興味深いデータを提示しています。圧倒的多数が「母国語が確立してから」などで、「0~3才から」と答えた人は1割強でした。
このデータを、“外国語は母国語が確立するまで教えない”という意味で引用しているのではありませんし、鳥飼氏の意見が絶対正しいと思っているわけでもありません。実際に国際結婚の事例では、母と父が双方の言語で幼少期から話し掛け続け、立派なバイリンガルに育つケースを数多く見てきました(このことから、谷口さまの夫君も次女に日本語で十分話し掛ける努力をされているか気になりました)。ただ、“母国語を確立することの大切さ”も重要視したい、という意味で申し上げています。
私は子どもたちがいろいろな国で働いているため、彼らを訪ねていろいろな国に滞在する機会があるほうです。海外では外国の人から食事会などに誘っていただくことが多いのですが、「私は英語ができないのに」と尻込みしますと、「とんでもない、いつも話がとても面白い」と言われます。発音も文法も語彙もめちゃくちゃで、何度も聞き返されながらの会話なので、ひどいお世辞ですが少し思い当たることがあります。
せっかく招いてくれたのですから、私を招いてよかったと思ってもらえるよう、英語ができない分も中身で勝負とサービス精神よろしく、話題を選びます。日本や韓国の風習や文化・住んでいる地域特有の行事などをTPOに合わせて話しますと、とてもいい自己紹介にもなり、喜んでもらえます。
海外では、英語は流暢でも、アイデンティティがはっきりしない人の話題が、ときに魅力がないのとは逆に、私との会話は、(私の背景である)日本と韓国とのある種の異文化体験になっているのではないでしょうか。外国人との会話では、折に触れ自分の国や故郷について語れることは重要です。
ご夫君の機嫌を取るために、ご長女の英語漬けを辞めてはと言うのではありません。ですが、子どもが世界で羽ばたくためにも、母国語で母国の文化を深く語れるように教育してあげることは、英語を早期に習得させてあげることと同様に、非常に重要だと申し上げているのです。
日本人の日本語がヤバイ
最後に、私のハワイでの思い出です。この東洋経済でもコラムを連載していた息子は、実は結構親孝行な側面があり、私を何度もハワイに連れて行ってくれました。そこで、とてもすばらしい夕陽の絶景を眺めていたときのことです。そこに7~8人の20代の美しい女性たちが、浜辺に入って来ました。モデルクラブの慰安旅行かと思うほどの、いずれも脚がスラリとした美人揃いに、老婆の私でも目を見張りました。
ところがその美人たちが口ぐちに発した言葉が、「キャーッ、ヤバイ」「なにこれ、ヤバイ」「本当にヤバイよ」「ねぇ~、かなりヤバイね」「うん、ヤバイ、ヤバイ」と、絶景の夕陽を前に「ヤバイ」だけで会話が成立しているのです。美人が台なしでした。
「ヤバイのは、あなたたちの日本語です!」とも言えず、「日本語がヤバイ」と独り言をつぶやいたのですが、英語はもちろん、母国語も非常に心配なレベルの大人が増えていることに危機感を募らせました。谷口様のお子様が、世界に可能性を開く英語とともに、日本語という美しい言語もしっかりと習得されますよう、陰ながら応援しております。
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