《プロに聞く!人事労務Q&A》中堅社員のライバル企業への転職を阻止することはできますか?

拡大
縮小

さて、御社の就業規則に具体的にどのような記載があるのか詳細は不明ですが、単に「退職後3年以内は同業他社への転職を禁じる」という就業規則の記載だけでは、今回のように「中堅の営業社員が同業他社へ転職すること」を阻止することは、かなり困難であると考えます。

その理由(推測を含む)は、(1)特約(誓約書など)がないこと、(2)中堅の営業社員であること、(3)競業避止義務を課す期間が3年と比較的長いこと、(4)同業他社の定義(地域、職種など)が定められていないために禁止する範囲が広くなっていること、(5)労働者に対して代償措置が取られていないこと、などです。

現状のまま放置しておきますと、今後「深刻な労使紛争」に発展する可能性がありますので、前記(1)~(5)の問題点を解消するか又は考慮することなどを材料にして、当該労働者と誠意を持って協議をし、円満退職を目指すことが得策ではないかと考えます。

なお、今後も他の労働者と同様のトラブルが起きないとも限りませんので、就業規則の変更と特約の締結を検討することをお勧めします。具体的には、競業避止の期間や地域、対象者、職種の範囲、会社の利益(企業秘密の保護)と従業員の不利益(転職、再就職の不自由)とのバランス、企業秘密の内容や程度、社会的利害などを考慮して記載を検討することになります。

半沢公一(はんざわ・こういち)
1980年東洋大学経済学部卒業。IT関連会社で営業、人事労務及び派遣実務に従事した後、91年に独立し半沢社会保険労務士事務所を開設。就業規則をベースとした労務相談を得意とする。企業や団体での講演・講義も多い。現在、東京労働局紛争調整委員会あっせん委員、東京都社会保険労務士会理事等を務めている。著書多数。


(東洋経済HRオンライン編集部)

人事・労務が企業を変える 東洋経済HRオンライン

 

関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT