「月収10万円」都内で一人暮らし続ける女性の苦境 食事はフードバンク頼り、娯楽はテレビだけ

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吉田雅美さん(仮名、51歳)はウンザリした様子で語りだした。季節外れの薄手のジャケットを羽織っていて肌寒そうだった。地方出身、学歴は専門学校卒、結婚経験はない。20年前に上京してから23区内で一人暮らしを続ける。

非正規雇用の低賃金、低収入が原因となるギリギリの生活は、今に始まったことではない。30年前に社会人になってからずっと続いている。家賃負担率は5割を超えている。働いて節約しても、食料を買うお金は残らない。生きていくために、NPO法人が開催するフードバンクや配食をくまなくチェックしている。

「いまの在宅仕事を始めたのは半年前、それまでは短期の仕事を転々とする季節労働者みたいな感じでした。バイトアプリを使って仕事を探す。だから時期によって会社が変わる。仕事先はさまざまで、データ入力や荷物の仕分けの仕事。労働期間が短いため、つねに仕事を探している感じです」

正規雇用の経験はほとんどナシ

雅美さんは安定した正規雇用の仕事の経験は、ほとんどなかった。専門学校から新卒入社した地元の零細企業を辞めてから、ずっと非正規雇用である。給与形態は時給か日給であり、なんの保障もない。今日生きるために、今日働かなければならないという綱渡りのような生活が続いている。

「使えるお金がまったくないので、余暇みたいなことはありません。娯楽といえば、テレビを観るくらいです。買い物をする余裕もなく、誰かとなにかして楽しいみたいな記憶はほとんどないです。そんな状況なので休日は配食に並んだり、ギフト券とかQUOカードをもらえるアンケートを受けるとか、そういう少しでもお金になることをしています」

エクセルで書かれた履歴書のようなものを見せてくれた。短期契約の仕事を除いても、転職回数は20回を超える。退職理由も書いてある。セクハラ、パワハラ、喘息、逆流性食道炎など、ネガティブな言葉がズラリと並ぶ。ほとんどの会社を健康や人間関係が理由で1~2年の期間で辞めていた。

「頑張って働いても、病気をしたりケガしたり。長期の仕事に就けたとしても、どこかで体調悪くして辞めてしまう。病院に行くと、給料は治療費で消える。そんな繰り返しです。短期契約の仕事に手を出したのは、期間が決まっているほうが、人間関係が煩わしくなくて続くかもと思ったから。しんどくなっても、もうすぐ終わりだからってゴールがあるので続けられる」

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