次の標的は大林組、英ファンド「株主提案」の狙い 株主還元の口実に「PBR」、強まる株主の圧力

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2022年、地銀に対して株主還元を迫った「シルチェスター」が大林組に株主提案を行った。2023年はゼネコンに狙いを定めたようだ(記者撮影)

イギリスの投資ファンド、シルチェスター・インターナショナル・インベスターズが4月25日、大手ゼネコンの大林組に株主提案を行ったと発表した。

提案は6月に開催予定の定時株主総会に向けられたもの。会社計画である2023年3月期の通期配当42円に対して、特別配当として別途12円を加算し、計54円の配当とするように求めた。

シルチェスターは大林組の株式を4.1%保有する大株主。2021年7月に大林組の株式を取得し、以後取締役会と対話を行ってきた。2022年12月に都内で行われた面談では、シルチェスターが国内建設事業の低収益性を指摘するとともに株主還元強化を求めたが、会社側は拒否。2023年3月にも配当政策の見直しを求める手紙を送付したが、会社側が受け入れなかったため、株主提案に至ったという。

大林組も翌26日に提案を受領したと発表。株主提案に対する取締役会の意見は決定次第発表するとしている。

地銀からゼネコンへ

12円という特別配当の背景にあるのが、シルチェスターが掲げる配当政策だ。同社は「コア事業からの純利益の50%」、および「保有株式から受け取る年間配当金の100%」の還元を標榜している。この2軸にしたがって計算した結果、1株あたり54円の配当が妥当だという。そこで、不足分である12円を特別配当として要求した。

コア事業の半分と受取配当金の全額――。独自の配当政策は、シルチェスターが2022年に複数の地方銀行に対して行った株主提案と重なる。

シルチェスターは2022年6月に開催された定時株主総会において、岩手銀行、京都銀行、滋賀銀行、中国銀行(現ちゅうぎんフィナンシャルグループ)の4行にも、まったく同じ論理で配当額を算出し、不足分を特別配当として求めた(地方銀行の目を覚ました「シルチェスターの乱」)。

いずれの提案も総会で否決されたが、その後地銀界では株主還元を強化する動きが相次いでいる。

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