次の標的は大林組、英ファンド「株主提案」の狙い 株主還元の口実に「PBR」、強まる株主の圧力

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シルチェスターは2022年9月末時点で53社の日本企業に投資をしている。ゼネコンでは大林組のほか、大成建設や清水建設、戸田建設、奥村組にも大株主として名を連ねている。

シルチェスターのリリース
シルチェスターが4月25日に公表したリリース。特別配当への賛同を推奨している(編集部撮影)

その中で、なぜ大林組が狙われたのか。シルチェスターは株主提案の理由として7%というROE(自己資本利益率)の低さを挙げているが、要因はほかにもありそうだ。

ヒントは、前述の地銀たちにある。2022年当時、シルチェスターは横浜銀行を中核とするコンコルディアFGやおきなわFGの株式も保有していたが、彼らには株主提案を行わなかった。提案を免れた2行は、直近決算における総還元性向が50%を超えていた。

シルチェスターも、東洋経済の取材に「過去10年間、コンコルディアは定期的に自己株買いや増配を行っており、総還元性向は60%に迫る。これは岩手、京都、滋賀、中国銀行いずれの事例とも異なる」と答えている。

大林組以外に飛び火も

この基準をゼネコンに当てはめると、大林組の名前が浮かび上がる。シルチェスターが投資しているゼネコンの総還元性向を見ると、大成建設、戸田建設、奥村組が2023年3月期にいずれも50%を超える公算に対して、大林組は42%程度に留まるのだ。シルチェスターはこの還元の少なさに不満を抱いた可能性が高い。仮に、提案された12円の特別配当を実施すると、大林組の総還元性向は54%に上昇する。

残る投資先である清水建設の総還元性向は約30%と、大林組同様50%に満たない。昨年は岩手銀行が最初に株主提案を受け、少し時間を置いてほかの3行が同様の提案を受領した。今後、ほかのゼネコンに株主提案が飛び火する可能性もゼロではない。

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