株式市場への目配りを怠る経営はもはや通用しない。地銀の経営者はいっそう難しい舵取りを迫られそうだ。
「これまでは面談の依頼が来たときだけ対応していたが、今後はわれわれの方から投資家にアポイントを取って、説明に伺う」。そう話すのはある地方銀行の幹部だ。態度を改めるきっかけは、今春の肝を冷やす出来事だった。
「現在の当会社の配当政策は不十分であり、是正されなければ、日本の株主を含む当会社の株主に更なる弊害をもたらすこととなるでしょう」。
2022年4月、婉曲に地銀の経営陣を批判する書簡を公開したのは、イギリスの運用会社「シルチェスター・インターナショナル・インベスターズ」。書簡では、株式を約15年保有してきた岩手、京都、滋賀、中国銀行の4行に対して、特別配当を求める株主提案を行うと表明した。
単なる「増配」を求めたわけではない
株主提案は6月に開催された4行の株主総会に諮られた。いずれも賛成率は2割強にとどまったが、古参の大株主の豹変は、地銀の株主との対話に変化をもたらす契機になるはずだ。
シルチェスターの株主提案は、2022年3月期の年間配当額を会社提案の2倍前後に引き上げる内容だ。提案を受けた4行は一斉に反対を表明し、滋賀銀行を除く3行はそろって「短期的な視点に立脚したもの」と断じた。
だが、シルチェスターが求めたのは単なる増配ではなかった。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら