PBR1倍割れが定着している地方銀行株。その地銀株に特化した投資ファンドが登場した。
2021年12月。万年割安株とも揶揄される地方銀行の株式に、あえて狙いを定める投資ファンドが立ち上がった。
「変わりたいという意志が経営者にある限り、地銀は変わることができる」。地銀特化ファンドを運営する「ありあけキャピタル」の田中克典・代表取締役CIOは力説する。田中氏はゴールドマン・サックスで約20年間アナリストを務めた後、2020年4月にありあけキャピタルを設立。2021年のファンド組成時には、約50億円の資金を集めた。
すでに北國フィナンシャルホールディングス(以下、北國)や愛媛銀行など複数の地銀に投資しており、将来的には最大10行程度の地銀株を運用する。いわゆる「モノ言う株主」と異なり、株主提案や会社提案の否決など経営陣と対決姿勢を取るのではなく、対話を通じて投資先が自発的に企業価値向上に取り組むよう促す。
ありあけキャピタルは厳しい経営環境にある地銀の成長性を、どこに見出しているのか。
投資家は地銀を悲観しすぎ
「地銀の株価がここまで割安なのは、潜在的な不良債権を抱えているからだろう。不良債権を割り引いた、本当のブックバリュー(簿価)を算定してくれないか」
田中氏はゴールドマン・サックス時代、海外投資家からこんな問い合わせを一度ならず受けてきた。1倍を大きく割り込むPBR(株価純資産倍率)の背後には、財務を毀損するリスクがあるはずだ、という見立てだ。
対する田中氏の答えは「原因は不良債権ではなく、構造的な赤字に陥るリスクだ」。赤字が続いて資本が半減すれば、PBRは倍になる。こうした事態を投資家が織り込んだ結果、PBRが0.2~0.3倍のまま放置されている、という説明だ。
だが、田中氏は自らの説明に違和感を覚えていた。
この記事は会員限定です。登録すると続きをお読み頂けます。
東洋経済ID 会員特典
東洋経済IDにご登録いただくと、無料会員限定記事を閲覧できるほか、記事のブックマークや著者フォロー機能、キャンペーン応募などの会員限定機能や特典をご利用いただけます。
東洋経済IDについての詳細はこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら