現役の消費者「高齢者」に気づかない日本のズレ感 五木寛之×和田秀樹(対談・後編)
和田:そのとおりです。じつは僕も『80歳の壁』に合わせて、団塊の世代向けの映画を作りたいんです。というのも、団塊の世代の人たちは、若い頃、映画館に当たり前に行っていた世代です。ところが、僕等の世代より若い人だと、映画館に行く習慣がある人は少数派です。だったら、かつて映画館に通っていた世代の人が来るような映画を作るほうが、よっぽど当たったら大きいんじゃないかと思っています。
尊敬される老大国をめざせ
五木:国の歴史を見ていくと、青年だったその国がどんどん大人になっていく様子がわかりますよね。イギリスは、老大国として上手く年を取っている感じがしますし、ポルトガルやスペインもそうですね。だから日本も、ジャパン・アズ・ナンバーワンみたいなものを目指すんじゃなくて、経済も政治も文化も成熟していく方向に向かっていかないと。
和田:長老として、ケンカしている国に対して「お前ら、青いなあ。戦争で勝ったって得なんかしねえんだよ」みたいなことを言えるような国になってほしいですよね。
五木:ほんとにそう思います。その点で、アメリカは上手く年を取れていないでいる感じがしますね。先輩に大英帝国があるにもかかわらず、まだ若さにこだわっている。和田さんの話を聴くと、日本もまだ若さにこだわっているんじゃないか。
以前、『下山の思想』という本を書いたことがあるんです。そのときに「下山なんて景気の悪いことを言うな」って、さんざん言われてね。でも、豊かなる下山という考え方もあるんですよ。落ち着いていい年の取り方をした国々は、ちゃんと尊敬されてるじゃないですか。
和田:北欧もそうですね。スウェーデンやフィンランドに行くと、何となくほっとするんです。お年寄りと若い人が共存しているし、あんまりガツガツしてない。それなのに何となく豊かなんですね。高い税金を払っても、元を取るのは当たり前だと思っているから、お年寄りが堂々と福祉サービスを受けています。
五木:やっぱり日本は覚悟してね、無理に若作りしないで、本当の意味での高齢文化を作り上げなきゃいけない。尊敬される老大国になればいいんですよ。
(構成:斎藤哲也/写真:岡本大輔)
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