80過ぎて「病院要らずの人」が健診より重視する事 五木寛之×和田秀樹(対談・前編)
自分の「体の声」を聴く
五木:僕は戦後70年以上、80歳半ばになるまでずっと病院に行ったことがなかったんです。健康診断も受けたことがありません。そのかわり、自分の体の面倒は自分で見ようと。これは健康法じゃなくて「養生」だという考えでずっとやって来ました。
『シン・養生論』にも書いたことですが、例えば僕は、いくつかの病気を自分流に克服してきた経験があります。1つは偏頭痛です。30代から40代にかけて、ひどいときは何日も吐いてしまうほど偏頭痛が激しい時期がありました。医学に関する学術書や専門書を読み漁って勉強して理屈はわかっても、状況は変わらない。
そこで自分の体を冷静に観察していると、偏頭痛の起こるリズムがわかってきたんですね。どうやらそれは気圧と関係があるらしい。世間では低気圧のときに偏頭痛が起きるとか言うけど、僕の場合、高気圧が続き、それが崖下に落ちるように急激に変化する曲がり角のところで偏頭痛が起きることに気づきました。
それから天気図を細かく読むようになりました。大阪で雨が降ったら6時間後に低気圧が来る、福岡だと1日後、上海だと、といったぐあいに、気圧の変化を毎日読みながら、低気圧に備えて対処するようにした。
和田:具体的にどういうことをされていたんですか。
五木:偏頭痛には、予兆があることに気づいたんですね。ぼくの場合だと、まず上まぶたが下がってくる。それから唾液(だえき)が妙にねばつく。そのほかいろんな予兆が出てくるのです。それを早く気づいて、パスできるように対処した。
風呂には入らないし、お酒も飲まない。原稿の締めきりを延ばしてもらう(笑)。自分の体の声をきいて、それに素直にしたがうことにしました。先手を打つことでパスしてきました。