80過ぎて「病院要らずの人」が健診より重視する事 五木寛之×和田秀樹(対談・前編)
和田:嚥下は命に大きく関わるところだから、非常に大事です。死因の3位は肺炎でしたが、今は肺炎と誤嚥性肺炎を分けていますからね。90歳ぐらいだと、嚥下力はけっこう落ちるんです。
五木:年を取ると、流動食みたいな物をよく食べさせられるじゃないですか。あれが嫌なんです。やっぱり固い物を食べていないとね。だからそしゃくについてもかなり研究したし、自己流でトレーニングを続けました。ある種の遊びとして、ですけど。
「前頭葉バカ」になるな
和田:僭越な言い方ですが、五木さんはそのおかげで脳が若いですよね。というより、わからないから試してみようとできることが、脳の若さだと僕は思うんですよ。
ふつう、脳が老化するというと、みんな記憶力が低下することだと考えるんですけど、記憶力の低下なんて大したことないんです。もっと重要なことは、物事への意欲です。普通の人は、40代、50代から意欲が落ちるんですよ。なぜ落ちるかというと、前頭葉を使ってないからその機能が落ちるからだと僕は思っています。
この前頭葉を使わない暮らしが、実験をしない暮らしなんです。つまり、40代、50代ぐらいから、行きつけの店でしか食事をしなくなったり、同じ著者の本しか読まなくなる。それから、自分の前例踏襲とか経験から先に答えを出しちゃうんですね。
五木さんは先に答えを出さないじゃないですか。学問的なことも吸収するけれど、それを鵜呑みにせず、自分であれこれ試して答えを出す。これがじつは日本人にいちばん欠けているところで、多くの人が「前頭葉バカ」になってしまうんです。
五木:僕が自己流のトレーニングを続けていられるのは、楽しみでやっているから。面白いから、興味があるからやる。健康は義務じゃありませんからね。
(後編に続く)
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