80過ぎて「病院要らずの人」が健診より重視する事 五木寛之×和田秀樹(対談・前編)

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和田:嚥下は命に大きく関わるところだから、非常に大事です。死因の3位は肺炎でしたが、今は肺炎と誤嚥性肺炎を分けていますからね。90歳ぐらいだと、嚥下力はけっこう落ちるんです。

五木:年を取ると、流動食みたいな物をよく食べさせられるじゃないですか。あれが嫌なんです。やっぱり固い物を食べていないとね。だからそしゃくについてもかなり研究したし、自己流でトレーニングを続けました。ある種の遊びとして、ですけど。

「前頭葉バカ」になるな

『80歳の壁[実践編] 幸齢者で生きぬく80の工夫』和田秀樹
肉を食べるなら朝からがいい。よい睡眠のためには「夜牛乳」と「6分間読書」を。入浴は午後2〜4時が最適等々。お金も手間もかからない、ちょっとした工夫をプラスするだけで、あなたも人生でいちばん幸せな20年を生きる幸齢者に。大ベストセラー『80歳の壁』が具体的に進化した、決定版・老いのトリセツ誕生

和田:僭越な言い方ですが、五木さんはそのおかげで脳が若いですよね。というより、わからないから試してみようとできることが、脳の若さだと僕は思うんですよ。

ふつう、脳が老化するというと、みんな記憶力が低下することだと考えるんですけど、記憶力の低下なんて大したことないんです。もっと重要なことは、物事への意欲です。普通の人は、40代、50代から意欲が落ちるんですよ。なぜ落ちるかというと、前頭葉を使ってないからその機能が落ちるからだと僕は思っています。

この前頭葉を使わない暮らしが、実験をしない暮らしなんです。つまり、40代、50代ぐらいから、行きつけの店でしか食事をしなくなったり、同じ著者の本しか読まなくなる。それから、自分の前例踏襲とか経験から先に答えを出しちゃうんですね。

五木さんは先に答えを出さないじゃないですか。学問的なことも吸収するけれど、それを鵜呑みにせず、自分であれこれ試して答えを出す。これがじつは日本人にいちばん欠けているところで、多くの人が「前頭葉バカ」になってしまうんです。

五木:僕が自己流のトレーニングを続けていられるのは、楽しみでやっているから。面白いから、興味があるからやる。健康は義務じゃありませんからね。

 

(後編に続く)

五木 寛之 作家
いつき ひろゆき / Hiroyuki Itsuki

1932年福岡県生まれ。戦後、北朝鮮より引き揚げ。1952年早稲田大学露文科入学。中退後、PR誌編集者、作詞家、ルポライターなどを経て、1966年『さらばモスクワ愚連隊』で小説現代新人賞、1967年『蒼ざめた馬を見よ』で直木賞、1976年『青春の門 筑豊篇』ほかで吉川英治文学賞を受賞。著書に『蓮如』『風の王国』『百寺巡礼』など多数。2002年、第50回菊池寛賞、2010年『親鸞』(上)(下)で第64回毎日出版文化賞特別賞を受賞。累計300万部超のベストセラー『大河の一滴』中国語版が好評発売中。近作に『五木寛之 セレクション』『人生のレシピ』シリーズなど。2022年より日本藝術院会員。

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和田 秀樹 精神科医

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わだ ひでき / Hideki Wada

1960年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。精神科医。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェロー、浴風会病院精神科医師を経て、現在は和田秀樹こころと体のクリニック院長。高齢者専門の精神科医として、30年以上にわたって高齢者医療の現場に携わる。『70歳が老化の分かれ道』(詩想社新書)、『80歳の壁』(幻冬舎新書)、『60歳からはやりたい放題』(扶桑社新書)、『老いたら好きに生きる』(毎日新聞出版)など著書多数。

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