たとえば楽しい思い出は、インプレッション(印象)が強く、感情が大きく動くので、無理に覚えようとしなくても自然に記憶に残るのです。
そんなメカニズムを学習面で活かせば、記憶作業がはかどるのは当然でしょう。
頭のいい人は「情報の加工力」が高い
では海馬が「大事」と判断した情報を、どうすれば長く維持できるのでしょうか?
私たちができる記憶の方法は2つです。
1つ目は、何度も唱えて覚えること。
この手法を認知心理学の用語で「維持リハーサル」と言います。その名の通り「記憶を維持するために、自分で何度もリハーサルを行う方法」です。
先ほど「海馬が長期記憶と認定してくれる3大条件」として「回数」を挙げましたが、何度も脳に叩き込むことで、数十秒程度は記憶をキープし、思い出せます。
身近な例で言うと、「九九」を覚えるときの手法が「維持リハーサル」の代表格です。
通常、小学2年生で教わる九九。たいていのお子さんは暗唱を何度も機械的に繰り返すうちに、一の段から九の段までそらで言えるようになります。
大人だって、この維持リハーサルを一度はしたことがあるはず。たとえばあなたは、身近な人の電話番号や新居の住所を暗唱した経験はないでしょうか。
あるいは買い物に行くとき。「今日必ず必要なのは大根、豚肉、洗剤。大根、豚肉、洗剤……」などと唱えながら記憶をキープしようとしたことはないでしょうか。
それこそが維持リハーサルです。
記憶の方法の2つ目は、「精緻化」です。
「精緻」という字面から、精緻化とは「非常に細かい点にまで注意を行き届かせること」と解釈する人がいるかもしれません。
ただ認知心理学の世界では「効率的な記憶のための手法」の名称として、「精緻化」という言葉を使います。
うんとわかりやすく言うと「与えられた情報を、そのままの形で覚えるのではなく、個人的な新しい意味付けをしてから頭に入れる方法」です。
その情報に対して何か気付いたり、何かイメージが浮かんだり、ということも精緻化になり得ます。
例を挙げてみましょう。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら