孤独大国・日本で犬と暮らす人が幸せな科学的理由 麻布大学獣医学部教授の菊水健史さんに聞く

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犬と生活することは子どもの成長にも良い影響をもたらすといわれている。熟年夫婦が犬の存在によって良好な関係を維持しているという話もよく耳にする。菊水さんの研究チームでは、そうした犬との共生による人のウェルビーングの促進に着目した社会学的研究もスタートしている。

「子どもが犬と生活すると確かにウェルビーングが高まります。けれども、それが犬との関係によって生じているのか、犬がいることで家庭の雰囲気や家族の会話が豊かになっていい影響があるのか、まだわかっていません。僕は、家庭環境の変化によるところが大きいと思っているので、犬を飼っているご家庭に協力してもらって実験をはじめたところです。」

犬を飼っている人と飼っていない人との違い

「具体的なテーマは2つあります。1つは子どもの頃に犬と生活していた人の経験は、社会に出て1人で生活するようになってから友人などの社会ネットワークにどう影響するのか? もうひとつは、犬を飼っている人と飼っていない人で、地域のネットワークにどれほど違いがあるのか?ということです。

都心に住む人は職場と自宅を往復するだけで、自分の家には住んでいてもその地域には住んでないんですね。でも犬と散歩しているとよく声をかけられますし、飼い主同士の会話も増えます。そのため地域とのつながりが生まれやすくなるのです」

菊水さんの本によると、国連の世界幸福度調査2020年版で、日本人の幸福度は先進国で最下位、世界でも63位。特筆すべき点として、日本人は寛容性が際立って低く、社会的ネットワークや対人的な信頼感、社会参加などから算出される社会関係資本も167カ国中132位と圧倒的に低い。人が犬との共生をさらに向上させることができれば、その状況を改善できるかもしれないというのが研究チームの長期的な目標なのだ。

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