「犬は飼い主の声の抑揚や顔の表情を分別できます。聴覚や視覚から情報をキャッチした飼い主の変化を感知する能力もあります。もちろん嗅覚も鋭くて、人のストレスを汗の臭いで嗅ぎ分けることもできます。ストレスを感じると緊張感が高まって、汗から独特の臭いが出るからです。
災害救助犬も、がれきの下にいる人をストレスの汗の臭いで嗅ぎ分けて見つけ出します。試しにアルバイトで雇用した人を狭い場所に閉じ込めても、スマホを見ていたりするとストレスがないので犬は見つけられません。救助すべきターゲットではないと臭いで判断するわけですね」
人に対する犬の共感性と理解力の高さ
菊水さんの本によると、人に対する犬の共感性と理解力も驚くほど高い。飼い主があくびをすると犬にもあくびが伝染するだけでなく、喜びや悲しみの気持ちも移るという。一心同体とはまさにこのことだ。
「飼い主の情動を自分のことのように犬が感じるのは情動伝染といわれていて、長く一緒に生活している場合に起こります。逆に飼育期間が短いと、飼い主との関係がまだ構築されていないため情動は移りにくいですね。
飼い主の側から見た場合、仮にストレスがある人が犬と過ごす場合と過ごさない場合を比べてみると、犬といるほうがストレスホルモンは減ります。犬の存在によってこのような癒やし効果が得られるのは、オキシトシンの分泌が愛情や安心感を生み出しているからと考えられていて、結果的にウェルビーイングが向上します。これほど人と深い絆を育んで共生できるのは、動物のなかでも犬だけです」
人にもっとも近い動物は、知能が高く手足も使える同じ霊長類のチンパンジーだと思っていたけれど、パートナーには適しているのは犬のほうなのだ。
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