では今、どういう犬が飼いやすいのか? 菊水さんの研究チームでは、柴犬、秋田犬、シベリアンハスキーなど遺伝的にオオカミと近いとされる古代犬種と、欧米で家畜化されたプードルなど一般犬種の2つのグループを比較実験する研究も行っている。
「一般犬種のほうが古代犬種よりも人への依存度が高く、人に慣れる社会的寛容性もあり、気持ちも伝染しやすいことがわかっています。日本でもっとも飼われているのも1位トイプードル、2位MIX犬(体重10kg未満)、3位チワワでどれも欧米犬種ですが、4位が柴犬です。(※)ただ柴犬に関しては古代犬種と言い切れなくなっていて、見た目は柴犬だけど中身は欧米犬種のようなタイプが増えてきているように思います。
古代犬種の柴犬は狐のような顔をしていますけれど、最近は丸っこい顔の柴犬が多いですよね。あれが欧米のように家畜化が進んだ柴犬です。狐タイプは他人に構われたくない代わりに、この人と決めた飼い主にはすごく従順になります。それに比べると丸っこい柴犬は人懐っこくて他人に構われても嫌がりません。そのぶん飼いやすくなっています」
犬のしつけは子育てと同じ
犬種や小型犬、大型犬にかかわらず、よく吠える犬もいる。それはしつけの問題なのだろうか? それとも人間同士でも相性の合う合わないがあるように、犬と飼い主との相性の良し悪しが関係しているのだろうか?
「僕は獣医学が専門ですから獣医と協力して、犬の特性や飼い方を理解していない方に犬の扱い方を指導する行動治療のサポートをしています。たとえば、散歩させている犬が吠えたときに『ダメよ』とやさしく声をかけて、早く泣き止ませようと犬を抱っこする人がいます。その対応は犬にとって報酬になるので、ますます悪化するんですね。“吠えれば抱っこしてもらえる”と思ってしまうので。
飼い主の食べ物を犬が横取りしようとしたときも、『なにしてるの? ダメじゃない〜』と甘い声を出すと、声の抑揚で遊んでくれていると勘違いしてしまいます。するとゲーム感覚でまた食べ物を横取りしようとして、間違って飲み込んでしまう誤飲も多いんですね。テーブルに出していた焼き鳥を串ごと犬が飲み込んだりしたら病院で即手術です」
犬のしつけはお互いのためにも厳しくしたほうがいいという意味では、子育てと同じかもしれない。
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